昨年後半以降、原油相場を皮切りに商品市況の高騰が続いたことで、生活に身近な商品が値上がりし始めている。2008年度に入り、食料品を中心に値上がりが相次いだことや、ゴールデンウィーク入り直後にガソリン価格が大幅な値上げに至ったことは、記憶に新しい。9月以降も幅広い商品・サービスで値上げが予定されており、家計の支出に及ぼすマイナスの影響も懸念されている(図表1)。
こうした値上げの動きが企業収益に及ぼす影響について、以下では経済分析による検証を試みた。
本稿の結論を先取りすると、コスト増加への対処法としてメーカーがとりうる方策は値上げだけとは限らず、消費者のメリット・デメリットと、メーカーのコスト・パフォーマンスとの兼ね合いから、価格、品質、数量などのコントロール可能な変数を適切に調整することで、よりよい解決策を見出すことができる。
図表1.相次ぐ値上げの動き
本稿の分析で援用するモデルは、製品差別化を伴うベルトラン複占競争のモデルである。
企業1はプレミアム商品メーカー、企業2は一般標準品メーカーと仮定する。企業1と企業2はともに同じ容量の商品を作っており、単位当り変動費用は両企業で等しいとする。固定費用は、企業1の方が企業2よりも常に大きいとする。潜在的な需要規模は、企業1よりも企業2の方が常に大きいとする(モデルの詳細な設定の解説は、後述【補遺】本稿のモデル分析結果の「A1.モデルの基本設定」に譲る)。
特集:2022年、値上げをどう乗り切るか
特集1.値上げの価格戦略
- MNEXT 眼のつけどころ 値上げの時代の生き残りマーケティング(2022年)
- MNEXT 眼のつけどころ 市場脱皮期の富裕層開拓マーケティング―価格差別化戦略(2021年)
- MNEXT 値上げをチャンスに変える(2008年)
- MNEXT 不況下でもうまい価格対応で伸びる企業(2009年)
- 戦略ケース 値上げと小売業の競争 物価上昇で小売とメーカーは新競争時代に突入(2022年)
- 戦略ケース 値上げの現場 花王―戦略的値上げで収益性向上なるか(2022年)
- 戦略ケース 利益率低下により再値上げに踏み切ったキユーピー(2008年)
- 戦略ケース 値上げか値下げか-消費低迷下の価格戦略(2008年)
- マーケティングFAQ 「需要の価格弾力性」とは
特集2.値上げが企業の収益に与えるインパクトを分析
特集3.消費者は値上げをどう受け止めたのか?
- 「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 2019春の食品値上げラッシュ!値上げ方法で明暗(2019年)
- 「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 値上げの影響を受けやすい牛乳、受けにくいマヨネーズ(2013年)
- 「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 食品の値上げと安全性(2008年)
- MNEXT 下がる給料、増える生活費(2008年)
おすすめ新着記事
消費者調査データ サブスクリプションサービス 広く利用される「プライムビデオ」、音楽サブスクには固定ファンも
調査結果を見ると、「Amazon プライムビデオ」が全項目で首位となった。「プライムビデオ」は認知率で認知率は8割強、利用経験では唯一4割強、今後の利用意向でも3割を超えている。
成長市場を探せ コロナ禍の壊滅的状況からV字回復、売上過去最高のテーマパーク
コロナ下では長期休業や入場制限などを強いられ、壊滅的ともいえる打撃を被ったテーマパーク市場、しかし、コロナが5類移行となった2023年には、売上高は8,000億円の大台を突破、過去最高を記録した。
消費者調査データ シャンプー(2024年11月版) 「ラックス」と「パンテーン」、激しい首位争い
調査結果を見ると、「ラックス(ユニリーバ)」と「パンテーン(P&G)」が複数の項目で僅差で首位を競り合う結果となった。コロナ禍以降のセルフケアに対する意識の高まりもあって、シャンプー市場では多様化、高付加価値化が進んでいる。ボタニカルやオーガニック、ハニーやアミノ酸などをキーワードに多様なブランドが競うシャンプー市場の今後が注目される。