コロナ禍で、消費動向が変化しています。その変化をいち早く把握し、ビジネスに役立てるために、官公庁などが発表する統計データから気になる動向をご紹介します。
1.平均消費性向は低下傾向
総務省公表の「家計調査」によると、二人以上世帯の勤労者世帯における平均消費性向は、2015年1月以降、緩やかな低下傾向にある。特に消費税増税が行われた2019年10月以降、平均消費性向の値は、昨年の同月時点に比べ低下している状態が続いている(図表1)。
図表1.平均消費性向の推移
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2.コロナウィルス感染拡大下で増える黒字
可処分所得と消費支出との差として定義される黒字について、最近1年間の動きを整理する。2019年6月から2020年5月にかけて、黒字の金額の前年同月差をみると、その値が+3万円以上となっているのは、2019年6月、2019年12月、2020年3月、2020年4月、2020年5月の計5か月である(図表2)。
図表2.黒字の変化
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2020年3月、2020年4月、2020年5月の3か月間は、ボーナス支給月ではないにもかかわらず、ボーナス支給月に近い、またはそれを超える水準で黒字が増えている。
特に2020年5月は黒字の増加分が突出して高い。これは、国民一人あたり10万円給付される特別定額給付金の影響が反映されているものと予想される。
3.黒字の増加分の主な行き先は預貯金純増とクレジット購入借入金純減
黒字額の構成要素の変化をみると、2020年3月から2020年5月までの3か月連続で、前年同月差の値が+1万円以上となっているのは、預貯金額とクレジット購入借入金純減の2つである。両者の前年同月差の合計額は、2020年3月時点で25,235円、2020年4月時点で28,623円、2020年5月時点では103,906円である。各月の黒字の前年同月差に対する、預貯金増減とクレジット購入借入金純減の前年同月差の合計額の比率は、2020年3月時点で0.793倍、2020年4月時点で0.916倍、2020年5月時点では1.075倍である(図表3)。
図表3.最近3か月における黒字の各構成要素の変化
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2020年3月以降増加を続けている黒字額の行き先は主に、預貯金が増えたことと、クレジット購入借入金の返済に向かっている。コロナ禍で、支出意欲の減退が続いているが、家計の購買力は高まっているということができる。
「消費動向速報」について
このシリーズでは、消費の動向を把握する上で重要な、官公庁等発表の諸統計の直近の動向をご案内します。
月1回公表の「月例消費レポート」とは若干スタンスが異なる、データの速報性や鮮度に重きを置いたショートレポートになります。各月の「月例消費レポート」発表後の消費の最新動向のフォローアップにお役立てください。
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