半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2020年07月27日

特集:コロナ禍の消費を読む
消費動向速報 進む基礎的支出へのシフト
主任研究員 菅野守


図表の閲覧には有料の会員登録が必要です。
登録済みの方はこちらからログインしてお読みください。

 コロナ禍で、消費動向が変化しています。その変化をいち早く把握し、ビジネスに役立てるために、官公庁などが発表する統計データから気になる動向をご紹介します。


「家計調査」基礎的支出と選択的支出:進む選択的支出から基礎的支出へのシフト

1.高まる基礎的支出のウェイト

 総務省公表の「家計調査」では、消費支出を構成する各品目は、支出弾力性の高低に基づいて、基礎的支出(支出弾力性が1未満の品目への支出)と選択的支出(支出弾力性が1以上の品目への支出)の二つに分けられている。

 基礎的支出と選択的支出の前年同月比伸び率の推移をみると、選択的支出の伸びは2019年10月以降マイナスへと落ち込み、マイナス幅も2020年3月以降、拡大している。基礎的支出も2019年10月以降、概ねマイナスで推移してきたが、2020年2月から4月にかけてプラスに戻した。そして2020年5月には再びマイナスへと落ち込んだが、マイナス幅は小幅なものにとどまっている(図表1)。


図表1.基礎的支出と選択的支出の前年同月比伸び率の推移

ログインして図表をみる


 消費支出に対する基礎的支出と選択的支出の構成比の推移をみると、2020年2月以降、基礎的支出の構成比は一貫して上昇を続け、2020年5月時点では62.1%となっている。加えて、2020年2月から5月までの4ヶ月間は、基礎的支出の構成比が前年よりも高くなっている(図表2)。


図表2.基礎的支出と選択的支出の構成比の推移

ログインして図表をみる


2.コロナ禍の下で伸びる感染対策用品、屋内リフォーム、内食支出

 新型コロナウイルスの影響が出始めたと考えられる2020年2月から5月までの間に、基礎的支出の中で特に伸びている品目に着目してみる。

 基礎的支出の品目のうち、2020年2月から5月の間の月あたり支出金額が1,000円以上で、各月での前年同月比伸び率の値が15%以上のものを選び出し、図表3にまとめた。各月の上位品目が、前年同月比伸び率の値の大きい順に列挙してある。

 2020年2月から5月までの4か月間全てで、上位品目として挙がっているのは、「他の家事用消耗品のその他」や「保健用消耗品」である。「他の家事用消耗品のその他」の中には、ウェットティッシュや漂白剤などが含まれており、「保健用消耗品」の中にはマスクやガーゼなどが含まれている。これらは、コロナウイルス感染拡大で、品薄となったものである(図表3)。


図表3.基礎的支出における前年同月比伸び率の上位品目

ログインして図表をみる


 「他の工事費」や「他の調味料」は、2020年2月からの4か月中3か月間、上位品目として挙がっている。「他の工事費」の中には、エアコン取付代やサッシ修理代、フローリング工事費などが含まれる。「他の調味料」の中には、うま味調味料、パスタソース、麻婆豆腐のもと、ゼラチン、各種エッセンスなどが含まれる。

 これらは、外出自粛で、自宅内で過ごす時間が増えたため、屋内の修理やリフォーム、内食や宅内での手作り料理などの機会が増えたと予想することができる。内食の増加との関連では、他に「米」「鶏肉」「牛肉」「豚肉」なども、伸び率の上位品目として挙がっている(図表3)。

 コロナウイルス感染症の終息に目途が立つまでは、基礎的支出は引き続き底堅さを保つ一方、選択的支出の低迷状況は続くと考えられる。感染対策への支出だけでなく、リモートワークの浸透や自宅で過ごす時間の増加で、屋内リフォーム支出や内食支出が引き続き基礎的支出の伸びを牽引していくこととなりそうだ。


「消費動向速報」について

 このシリーズでは、消費の動向を把握する上で重要な、官公庁等発表の諸統計の直近の動向をご案内します。

 月1回公表の「月例消費レポート」とは若干スタンスが異なる、データの速報性や鮮度に重きを置いたショートレポートになります。各月の「月例消費レポート」発表後の消費の最新動向のフォローアップにお役立てください。



特集:コロナ禍の消費を読む


参照コンテンツ


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


新着記事

2025.02.13

24年12月の「消費支出」は2ヶ月連続のプラスに

2025.02.13

24年12月の「家計収入」は3ヶ月連続のプラスに

2025.02.12

24年12月の「現金給与総額」は36ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2025.02.12

24年12月は「有効求人倍率」は横ばい、「完全失業率」は改善

 

2025.02.10

企業活動分析 エバラ食品工業株式会社 24年3月期は業務用好調で増収も原価率上昇で減収に

2025.02.10

企業活動分析 東洋水産株式会社 24年3月期は価格改定が奏功し売上利益ともに過去最高更新

 

2025.02.07

消費者調査データ チョコレート(2025年2月版) 首位「明治チョコレート」は変わらずも、PBのリピート意向高まる

2025.02.06

25年1月の「乗用車販売台数」は3ヶ月ぶりのプラス

2025.02.05

提言論文 新しい群れ集団が生む市場ダイナミズム

2025.02.04

24年12月の「新設住宅着工戸数」は8ヶ月連続のマイナス

  

2025.02.03

企業活動分析 本田技研工業 24年3月期は、販売台数増加により増収増益、営業利益は過去最高に

2025.02.03

企業活動分析 日産自動車株式会社 24年3月期は、販売台数増加に加えコスト管理により増収増益

  

2025.01.31

消費からみた景気指標 24年11月は7項目が改善

2025.01.30

24年12月の「ファーストフード売上高」は46ヶ月連続のプラスに

2025.01.30

24年12月の「ファミリーレストラン売上高」は34ヶ月連続プラス

2025.01.29

24年12月の「全国百貨店売上高」は2ヶ月連続のプラスに

2025.01.29

24年12月の「チェーンストア売上高」は既存店で2ヶ月連続のプラスに

2025.01.29

24年12月の「コンビニエンスストア売上高」は13ヶ月ぶりのマイナスに

2025.01.29

24年11月の「商業動態統計調査」は8ヶ月連続のプラス

2025.01.28

24年12月の「景気の先行き判断」は4ヶ月連続の50ポイント割れに

2025.01.28

24年12月の「景気の現状判断」は10ヶ月連続で50ポイント割れに

2025.01.27

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター No.168 管理職は筋トレ率2倍! 20〜30代の美容・健康意識がプロテイン市場をけん引

週間アクセスランキング

1位 2024.08.02

提言論文 値上げほどの値打ち(価値)はないー消費者の主要30ブランド価値ランキング

2位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

3位 2025.02.05

提言論文 新しい群れ集団が生む市場ダイナミズム

4位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

5位 2013.03.22

MNEXT ビックカメラによるコジマの買収はメーカーを巻き込んだ衰退業界再編の始まり

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area