コロナ禍で、消費動向が変化しています。その変化をいち早く把握し、ビジネスに役立てるために、官公庁などが発表する統計データから気になる動向をご紹介します。
家電出荷では、新型コロナウイルス感染拡大の動きが進んできた中で、先んじて回復の動きが出ている。
ノートパソコンは、コロナウイルス感染拡大を契機にリモートワークの導入が進む中で、復調に転じた。テレビやオーディオなどのAV機器では、コロナ下でのコンテンツ消費の活発化などを後押しに、復調の動きがみられる。
また、白物家電では、「ホットプレート」や「空気清浄機」など食生活や住環境の改善に力点を置いた宅内充実の動きが、裾野の拡がりをみせている。
1.コロナ下で再復調したノートパソコン
プラスの伸びを保ってきたノートパソコンの伸びは、消費税増税前の駆け込み需要をピークに、増税後は反動減となり、大幅な落ち込みが続いてきた。その後、コロナウイルス感染拡大から、リモートワークの導入が進み、ノートパソコンは復調に転じた。
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)「パーソナルコンピュータ国内出荷統計」から、ノートパソコン国内出荷台数の前年同月比伸び率の推移をみると、2018年10月から2019年11月にかけて、ノートパソコンは概ねプラスの伸びを保ってきた。
伸び率は、A4型・その他では2019年8月に、小型のモバイルノートでは9月にピークとなったのを境に、2020年2月にかけて低下が続いた。その後、伸び率は上昇に転じ、2020年4月と6月にはプラスに戻した。しかし、7月には再びマイナスに落ち込んでいる(図表1)。
図表1.ノートパソコンの国内出荷台数前年同月比伸び率の推移
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2.宅内充実の動きで伸びるAV機器
黒物家電では、コロナ下で宅内を充実させる動き、特にコンテンツ消費の活発化などを後押しに、テレビやオーディオなどのAV機器で復調の動きがみられる。
JEITAの「民生用電子機器国内出荷統計」をもとに、民生用機器の主要品目の中から、2018年1月以降でプラスの伸びが比較的目立っていた4K対応テレビとスピーカシステムに着目。前年同月比伸び率の推移をみると、4K対応テレビは2020年2月を除き2018年1月から2020年7月にかけて、スピーカシステムは2018年5月から2019年9月にかけて、プラスの伸びを保ってきた。
4K対応テレビの伸び率の値は、2019年9月にピークとなったのを境に低下が続いてきたが、2020年2月に一時マイナスに落ちたのを底に、その後はプラスに戻して再び上昇に転じている。
スピーカシステムの伸び率は2020年6月以降、プラスに戻っている(図表2)。2019年4月にピークとなったのを境に低下を続け、2019年10月から2020年5月にかけては、2020年1月を除きマイナスで推移してきていた。
図表2.4K対応テレビとスピーカシステムの国内出荷台数前年同月比伸び率の推移
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3.回復の裾野が拡がる白物家電
白物家電では、食生活や住環境の改善に向けた品目の回復が更に拡大し、回復の裾野が拡がっている。
図表3では、一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)「民生用電気機器自主統計調査」をもとに、民生用電気機器として提示された23品目の中で、2020年3月以降の全ての月で出荷台数が1万台を超えており、さらに2020年7月時点での出荷台数が前年同月比伸び率でプラスとなった12品目を列挙した。伸びがプラスとなった月数が多い順、プラス月数が同じ場合には2020年7月の伸び率の高い順になっている。
2020年3月以降、プラスが続いている品目のうち、「ホットプレート計」は2020年3月から7月にかけて5ヶ月連続でプラスだった。さらに、2020年4月以降は4ヶ月連続で+50%を超える伸びを示している。「空気清浄機」も2020年4月以降4ヶ月連続で+30%を超える伸びを示している。「トースター」は2020年3月から7月までの5ヶ月中4ヶ月間、「電気掃除機」と「電子レンジ」は5ヶ月中3ヶ月間、伸びは+10%を超えている(図表3)。
図表3.民生用電気機器における2020年3月以降の出荷台数前年同月比伸び率ログインして図表をみる
これら5品目は、食生活を豊かにする調理家電や住環境の改善に役立つ家事家電ということができる。3月以降、学校への登校や会社への出勤などへの自粛要請が出され、これらの調理家電や家事家電への需要がより一層高まったとみられる。
2020年6月以降、プラスへの転換がみられるものとして、7品目が挙げられる。「ジャー炊飯器」「除湿機」「ルームエアコン」「電気洗濯機」「電気冷蔵庫」の5品目は2020年6月以降2ヶ月連続でプラスである。特に、「ルームエアコン」は2ヶ月連続で+10%を超えている。「ジャー炊飯器」は7月に+20%台前半、「除湿機」は6月に+30%台後半の高い伸びを示している。「ジャーポット」と「電気アイロン」は2020年7月にプラスとなっており、特に「ジャーポット」は+20%台後半の高い伸びを示している(図表3)。
これら7品目も、食生活を豊かにする調理家電や住環境の改善に役立つ家事家電として、新たに需要が伸びてきた品目といえる。
4.家電需要は今後もコロナ下で底堅さを保つ見込み
情報通信機器、黒物家電、白物家電といった種類の違いを問わず、家電出荷は、コロナウイルス感染拡大の動きが進んできた中で、先んじて回復の動きが出ている。
情報通信機器の代表的品目のひとつでもあるノートパソコンは、コロナの感染者数が全国的に低下傾向にあり、リモートワークの動きが緩和されると、需要が短期的に落ち着くことが予想される。
中長期的には、リモートワークという働き方が企業規模や業界の違いを超えてどこまで普及・浸透していくかに、需要が左右されることとなりそうだ。
黒物家電の中で伸びが目立っているAV機器や、好調な品目が拡大しつつある白物家電については、コロナ下での宅内充実の動きが、それらの好調ぶりを支えている。黒物家電や白物家電への需要は、遅くてもコロナウイルス感染拡大開始から1年余りを経る2021年3月以降、需要の伸びに一服感が出てくることとはなるだろう。ただし仮に、雇用や所得への悪影響が2020年冬ボーナスあたりから出始めれば、需要の落ち込みの時期が早まるおそれもある。
中長期的には、コロナウイルスが感染収束し、ソーシャルディスタンス確保のための対応が本格的に解除となるまでは、宅内充実の動きは続くと予想される。そうしたニーズを反映した黒物家電や白物家電への需要は、その裾野を広げながら底堅さを保っていくだろう。
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