半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2021年08月31日

消費動向速報
失速するネット購買
主任研究員 菅野守


図表の閲覧には有料の会員登録が必要です。
登録済みの方はこちらからログインしてお読みください。

 コロナ禍で、消費動向が変化しています。その変化をいち早く把握し、ビジネスに役立てるために、官公庁などが発表する統計データから気になる動向をご紹介します。


盛り返していたネット購買の伸びが失速し、ピークアウトの気配もうかがわれる。
出前や食品・飲料など、コロナ下で好調を続けてきた品目でも、2021年4月以降は、伸びはプラスながらも、その低下が顕著になっている。
更に、家具や家電などの選択的耐久財を中心に、2021年4月以降の伸びが大きく低下し、マイナスへと落ち込む品目も増えている。


1.ネット購買にはピークアウトの気配

 ネット購買は盛り返しの動きがみられたが、再び失速傾向となっている。

 総務省公表の「家計消費状況調査」によると、二人以上世帯でのインターネットを利用した支出総額は、2021年3月頃を境に低下傾向に転じている(図表1)。


図表1.インターネットを利用した支出総額の推移

ログインして図表をみる


 支出総額の伸びも、2021年3月の+39.1%を天井に急落し、2021年6月時点では+5.0%にまで落ち込んだ(図表2)。


図表2.インターネットを利用した支出総額の前年同月比変化率の推移

ログインして図表をみる



2.好調を続けてきた「出前」などの伸びの低下が顕著に

 個別品目でのインターネットを利用した支出金額の伸びをみると、コロナ下で好調を続けてきた、出前や食品・飲料などの品目でも、2021年4月以降は、伸びの低下が際立っている。

 「インターネットを利用して購入した財(商品)・サービス」として提示した計20品目のうち、2020年4月から2021年6月までの15ヶ月間における前年同月比変化率の値が14ヶ月以上プラスで、2021年6月の変化率も+10%以上であったものは、「出前」「電子書籍」「ダウンロード版の音楽・映像、アプリなど」「食料品」「飲料」「健康食品」「音楽・映像ソフト、パソコン用ソフト、ゲームソフト」の計7品目である(図表3)。


図表3.前年同月比変化率がほぼ一貫してプラスを保ってきた品目での変化率推移

ログインして図表をみる


 そのうち、「電子書籍」「ダウンロード版の音楽・映像、アプリなど」「音楽・映像ソフト、パソコン用ソフト、ゲームソフト」といった、デジタル・コンテンツ3品目を除いた、残りの4品目はいずれも、コロナ下でネット経由での需要を大きく伸ばしたものである。「出前」は、Uber Eatsや出前館などの料理宅配の伸長を背景に、「食料品」「飲料」「健康食品」は、コロナ下で外出自粛が強化された中で、実店舗からネットへの購買シフトが進んだものである。「健康食品」については、ネットへのアクセスなどの宅内余暇時間の増加や健康への関心の高まりなども、ネット購買を後押ししてきたものと考えられる。


3.選択的耐久財を中心にマイナスへ落ち込む品目が目立つ

 概ねプラスを保ってきた品目でも、家具や家電などの選択的耐久財を中心に、マイナスへと落ち込む品目も増えている。

 「インターネットを利用して購入した財(商品)・サービス」として提示した計20品目のうち、2020年4月以降の3ヶ月間における前年同月比変化率の値が1度でも二桁以上のマイナスを記録したのは、「家具」「家電」「医薬品」「書籍」「紳士用衣類」「自動車等関係用品」の計6品目である(図表4)。


図表4.2021年4月以降前年同月比変化率の低下が進みマイナスに転じた品目での変化率推移

ログインして図表をみる


 それら6品目の前年同月比変化率の推移をみると、2020年10月以降は、伸びの低下傾向が共通にみられる。特に、2021年4月以降は、伸びの大幅な低下に加え、マイナスへ落ち込む動きもともに認められる。


 一旦盛り返しの動きがみられていたネット購買も、2021年4月以降は失速し、ピークアウトの気配もうかがわれる。

 「家計調査」における消費支出の伸びは2021年6月に大きく急落し、マイナスに落ち込んでいる。こうした消費の落ち込みは、夏季ボーナスの落ち込みやコロナ感染拡大などの悪影響によるものとみられる。これまで好調を保ってきたネット購買にも、こうした影響がどの程度まで波及してくるのか、今後の動きには要注意だ。



参照コンテンツ


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


新着記事

2025.02.13

24年12月の「消費支出」は2ヶ月連続のプラスに

2025.02.13

24年12月の「家計収入」は3ヶ月連続のプラスに

2025.02.12

24年12月の「現金給与総額」は36ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2025.02.12

24年12月は「有効求人倍率」は横ばい、「完全失業率」は改善

 

2025.02.10

企業活動分析 エバラ食品工業株式会社 24年3月期は業務用好調で増収も原価率上昇で減収に

2025.02.10

企業活動分析 東洋水産株式会社 24年3月期は価格改定が奏功し売上利益ともに過去最高更新

 

2025.02.07

消費者調査データ チョコレート(2025年2月版) 首位「明治チョコレート」は変わらずも、PBのリピート意向高まる

2025.02.06

25年1月の「乗用車販売台数」は3ヶ月ぶりのプラス

2025.02.05

提言論文 新しい群れ集団が生む市場ダイナミズム

2025.02.04

24年12月の「新設住宅着工戸数」は8ヶ月連続のマイナス

  

2025.02.03

企業活動分析 本田技研工業 24年3月期は、販売台数増加により増収増益、営業利益は過去最高に

2025.02.03

企業活動分析 日産自動車株式会社 24年3月期は、販売台数増加に加えコスト管理により増収増益

  

2025.01.31

消費からみた景気指標 24年11月は7項目が改善

2025.01.30

24年12月の「ファーストフード売上高」は46ヶ月連続のプラスに

2025.01.30

24年12月の「ファミリーレストラン売上高」は34ヶ月連続プラス

2025.01.29

24年12月の「全国百貨店売上高」は2ヶ月連続のプラスに

2025.01.29

24年12月の「チェーンストア売上高」は既存店で2ヶ月連続のプラスに

2025.01.29

24年12月の「コンビニエンスストア売上高」は13ヶ月ぶりのマイナスに

2025.01.29

24年11月の「商業動態統計調査」は8ヶ月連続のプラス

2025.01.28

24年12月の「景気の先行き判断」は4ヶ月連続の50ポイント割れに

2025.01.28

24年12月の「景気の現状判断」は10ヶ月連続で50ポイント割れに

2025.01.27

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター No.168 管理職は筋トレ率2倍! 20〜30代の美容・健康意識がプロテイン市場をけん引

週間アクセスランキング

1位 2024.08.02

提言論文 値上げほどの値打ち(価値)はないー消費者の主要30ブランド価値ランキング

2位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

3位 2025.02.05

提言論文 新しい群れ集団が生む市場ダイナミズム

4位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

5位 2013.03.22

MNEXT ビックカメラによるコジマの買収はメーカーを巻き込んだ衰退業界再編の始まり

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area