コロナ禍で、消費動向が変化しています。その変化をいち早く把握し、ビジネスに役立てるために、官公庁などが発表する統計データから気になる動向をご紹介します。
第3次産業はコロナ下で低迷が続き、未だコロナ前の水準を回復できていない。
コロナ感染拡大が第3次産業に与えた大きなダメージは、限られたごく少数の業種、とりわけ生活娯楽関連サービスに属する業種に集中している。
生活娯楽関連サービスに属する全35業種中、当該指数の低迷に寄与しているものは計13業種存在する。その多くは、旅行・レジャー・イベント・外食といった、外出関連の選択的サービスに類する業種である。
そうした業種を中心に、生活娯楽関連サービスで低迷・悪化が続いている。一部には改善の兆しも散見されるが、生活娯楽関連サービスの中で多数派を占めるには程遠い状況だ。
1.コロナ下で低迷が続く第3次産業
第3次産業はコロナ下で低迷が続き、未だコロナ前の水準を回復できていない。
経済産業省公表の「第3次産業活動指数」によると、第3次産業活動指数〔総合〕の季節調整済指数は2018年1月以降、緩やかな上昇傾向の後、2019年10月の消費税増税に伴う駆け込み需要と反動減を経て、概ね横ばいで推移してきた(図表1)。
図表1.第3次産業活動指数〔総合〕の時系列推移
ログインして図表をみる
第1回目の緊急事態宣言下にあった2020年5月には大幅な落ち込みをみせた。その後は、コロナ感染の波に左右されつつも回復の動きをみせていたが、2021年3月をピークに低下傾向に転じている。
総合の指数の数値も、2020年3月以降は一貫して100を割り込み、コロナ感染拡大直前の2020年2月の水準(101.4)を下回ったままだ。
2.コロナのダメージは生活娯楽関連サービスに集中
ただ、同じ第3次産業といっても、指数の水準は業種間で大きく異なっている。コロナ感染拡大のダメージは特に、生活娯楽関連サービスに集中しているようだ。
第3次産業活動指数で採用されている11大分類の各業種の推移は、大別すると三つのグループに分けられる。
ひとつめのグループは、2020年3月以降、総合を一貫して上回る推移をみせている業種群である。具体的には、「医療,福祉」「金融業,保険業」「物品賃貸業」「事業者向け関連サービス」「情報通信業」「不動産業」の計6業種が、これに該当する。これらの業種でも、2020年5月に指数は大きく落ち込んだが、いずれも総合に比べれば軽微なもので済んでいる(図表2)。
図表2.第3次産業活動指数 2020年3月以降、総合を一貫して上回る業種の指数の推移
ログインして図表をみる
ふたつめのグループは、2020年3月以降、総合の水準前後で変動している業種群である。具体的には、「電気・ガス・熱供給・水道業」「小売業」の計2業種が、これに該当する。特に小売業は2020年4月に、総合の2020年5月の水準を更に下回る程の大きな落ち込みを経験しているが、その後は2021年4月と8月を除き、総合を上回る水準で推移している(図表3)。
図表3.第3次産業活動指数 2020年3月以降、総合の水準前後で変動している業種の指数の推移
ログインして図表をみる
三つめのグループは、2020年3月以降、総合を一貫して下回る業種群である。具体的には、「卸売業」「運輸業,郵便業」「生活娯楽関連サービス」の計3業種が、これに該当する。
中でも、生活娯楽関連サービスの低迷ぶりは際立っている。2020年3月以降で指数の水準が最低となった2020年4月の数値は48.5、同期間で最大となった2020年11月でも81.5に止まる。直近の2021年9月には70.1にまで再び落ち込んでおり、2020年3月の水準すら下回っている(図表4)。
図表4.第3次産業活動指数 2020年3月以降、総合を一貫して下回る業種の指数の推移
ログインして図表をみる
今回のコロナ感染拡大は、製造業などの第2次産業よりも、第3次産業により大きなダメージを与えた。しかもその大きなダメージは、限られたごく少数の業種、とりわけ生活娯楽関連サービスに属する業種に集中したまま、低迷状態が続いているのが現状だ。
3.旅行・レジャー・イベント・外食関連業種の多くで低迷・悪化が続く
コロナ感染拡大による大きなダメージが集中した生活娯楽関連サービスに属する個々の業種をみても、ダメージの受け方は様々だ。
ここでは、生活娯楽関連サービスの低迷に影響している業種を特定する狙いから、生活娯楽関連サービスの中で一番下のレベルにあたる小・細分類の業種・全35業種のうち、2020年3月以降総合の指数を一貫して下回っているものを選別すると、計13業種、存在している。
まず、2020年3月以降生活娯楽関連サービスの指数をほぼ一貫して下回り続けており、2021年7月以降指数の低下が続いている計6業種を、「悪化が続いている業種」とした。この6業種は更に、指数のピークや底の時期、各時期からの変化傾向など、推移のパターンの類似性から、1)「ボウリング場」「パブレストラン,居酒屋」 2)「ホテル」「旅館」「リネンサプライ業」 3)「結婚式場業」 の三つに分けられる(図表5)。
図表5.生活娯楽関連サービスで悪化が続いている主な業種
ログインして図表をみる
次に、指数がゼロ近傍で低迷を続けている「海外旅行」1業種と、生活娯楽関連サービスの近傍で推移しつつ2021年6月以降は生活娯楽関連サービスの指数を下回り続けている「喫茶店」「食堂,レストラン,専門店」の2業種の、計3業種を「低迷・伸び悩みが見られる業種」とした(図表6)。
図表6.生活娯楽関連サービスで低迷・伸び悩みが見られる主な業種
ログインして図表をみる
最後に、2021年9月に指数が上昇しており、2021年1月から9月にかけて指数が上昇傾向にある計4業種を、「改善の兆しが見える業種」とした。この4業種は更に、指数のピークや底の時期、各時期からの変化傾向など、推移のパターンの類似性から、1)「フィットネスクラブ」 2)「浴場業」「遊園地・テーマパーク」「国内旅行」 のふたつに分けられる(図表7)。
図表7.生活娯楽関連サービスで改善の兆しが見える主な業種
ログインして図表をみる
これら、生活娯楽関連サービスの低迷に影響を与えている13業種の多くは、旅行・レジャー・イベント・外食といった、外出関連の選択的サービスに類する業種である。そうした業種を中心に、生活娯楽関連サービスでは依然、低迷・悪化が続いている。一部には改善の兆しが見える業種もみられるが、それらが生活娯楽関連サービスの中で多数派を占めるには、まだ程遠い状況だ。
参照コンテンツ
- MNEXT 2022年の消費の読み方-価値拡張マーケティング(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 市場脱皮期の富裕層開拓マーケティング―価格差別化戦略(2021年)
- オリジナルレポート コロナ下とコロナ後の消費の展望(2021年)(2021年)
- JMRからの提案 月例消費レポート 2021年10月号 マインド好転で消費の先行きに明るい展望(2021年)
- 企画に使えるデータ・事実 新設住宅着工戸数
おすすめ新着記事
消費者調査データ レトルトカレー(2024年11月版) 首位「咖喱屋カレー」、3ヶ月内購入はダブルスコア
調査結果を見ると、「咖喱屋カレー」が、再購入意向を除く5項目で首位を獲得した。店頭接触、購入経験で2位に10ポイント以上の差をつけ、3ヶ月内購入では2位の「ボンカレーゴールド」のほぼ2倍の購入率となった。
「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場 背景にある簡便化志向や節約志向
どんな人がパンを食べているのか調べてみた。主食として1年内に食べた頻度をみると、食事パンは週5回以上食べた人が2割で、特に女性50・60代は3割前後と高かった。パン類全体でみると、朝食で食事パンを食べた人は女性を中心に高く、特に女性50代は6割以上であった。
「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場 背景にある簡便化志向や節約志向
どんな人がパンを食べているのか調べてみた。主食として1年内に食べた頻度をみると、食事パンは週5回以上食べた人が2割で、特に女性50・60代は3割前後と高かった。パン類全体でみると、朝食で食事パンを食べた人は女性を中心に高く、特に女性50代は6割以上であった。