半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

(2009.10)

売りの現場で競り勝つ営業
-生活圏ベースの営業力開発システムの提案
舩木龍三

1.なぜ売れないのか
 ものが売れない。強者にとっても弱者にとってもせつない時代になった。不況期には強者が有利と言われた時代もあったが、どの競争ポジションにあっても売れない。

(1)弱者の売れない理由
 弱者は、すべてにおいて弱者であるから売れない。市場が伸びないなかで、ブランドの認知浸透度が圧倒的に劣位にある。認知率、トライアル率、現在使用者数、ロイヤルユーザー数の絶対値が強者とは大きな開きがある。
 教科書的な対策は、広告宣伝投資を強化し、認知率とトライアル率を上げ、ブランド力を強化しましょう、となる。しかし、弱者はそれが無意味なことを知っている。投資原資で強者に勝てないからである。教科書的には正しくとも、成功するには強者と同規模もしくはそれを上回る投資をしなければならず、そんな資金はどこにもない。このほか、革新的な新製品開発、新規チャネル開発、販売方法の差別化など多様な余地が残されているが、論理的な可能性はあっても、現実的な可能性はあまり残されていない。確率論からいえば開発投資をしている強者の方が革新的な新製品を出せるし、チャネルや販売方法も模倣されやすいのである。

(2)強者の売れない理由
 強者も売れない。マーケティング投資コストや営業人員数などあらゆる面で量的に優位に立っているが売れない。市場の成熟段階のセオリーは、ブランドとアイテムを多様化する、競合をしのぐ価格設定、よりすすんだ開放流通、ブランド差異化とベネフィット訴求となっている。しかし、これらの教科書的対策がほぼ通用しないことを強者は知っている。ブランド多様化は投資の分散とブランドの小粒化をもたらし、価格競争で利益を減らし、開放流通は組織小売業への利益移転につながった。資源の量的優位を活かした成熟突破のための量的拡大は、資源分散と利益減少になってしまったのである。
 強者が売れないもうひとつの理由は、弱者の集中戦略に1点を突破され、シェアを下げているからである。強者は市場に対して全方位で対応しており、1点を突かれたときの対応はなかなかできない。それでも全体では強者であるからだ。こうしたケースが続き、じわりじわりとシェアを下げていくのである。

(3)時代と不況に負け、売りの現場で負けている現実
 そして、両者に共通している理由がある。時代と不況に負け、売りの現場で負けていることだ。
 市場は大きく変わっている。注目すべきは変化は三つある。第一は、世代交代である。若年世代のクルマ離れ、アルコール離れに代表されるが、バブル崩壊を経験した若年世代はその上の世代とは価値意識、行動が全く異なる。消費好きの上の世代から勤勉、禁欲、堪忍の3K消費世代へと交代する時期に入っている。上の世代とはお金をかけている分野が異なり、従来のマーケティングが通用しない。
 第二は、不況下でターゲットとする顧客ニーズが変わったからである。不況で売れないのは、節約しているからではない。不況によって変わる消費者の気持ちを掴めていないからである。食品でいえば、リーマンショック前のちょっとした贅沢や癒し、時間充実のニーズが弱まり、割高感のないもの、純粋なおいしさ、絆・関係性といった強まるニーズに対応できていないからである。
 第三は、地域格差である。それまでは伸びるチャネルや得意先に重点をおけば伸びていたが、小売業の勝ち組はほとんどいない。伸びているのは東京や都市部など一部の地域で、特定得意先に重点化しても、全体ではマイナスという状況に陥るのだ。
 地域が変わり、そこにいる顧客の世代交代やニーズが変化している。売りの現場が変わり、売れていないのである。全体で売れない、負けているのではない。売りの現場で状況は異なる。変わる売りの現場における資源配分の仕方が間違っていること、そこに生活する顧客の変わる気持ちを掴めていないことが問題なのだ。

(2009.10)


本稿は、当社代表・松田久一による助言・指導をもとに、舩木が代表執筆しております。本稿の内容は、松田からのアイデア・構想に大きく負っております。ここに謝意を表します。あり得べき誤りは筆者の責に帰します。
 本コンテンツの全文は、メンバーシップサービスでのご提供となっております。
 以降の閲覧にはメンバーシップサービス会員(有料)ご登録が必要です。

メンバーシップサービス会員のご案内についてはこちらをご覧ください。
メンバーシップサービス会員の方は、下記をクリックして全文をご利用ください。

新着記事

2024.11.20

24年9月の「旅行業者取扱高」は19年比で75%に

2024.11.19

24年10月の「景気の先行き判断」は2ヶ月連続の50ポイント割れに

2024.11.19

24年10月の「景気の現状判断」は8ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.11.18

企業活動分析 アルファベット(グーグル)の23年12月期は、グーグルサービスがけん引し売上過去最高を更新

2024.11.18

企業活動分析 アマゾンの23年12月期はAWSがけん引し営業利益前年比3倍へ

2024.11.15

24年9月の「現金給与総額」は33ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.11.14

24年9月の「消費支出」は5ヶ月連続のマイナスに

2024.11.14

24年9月の「家計収入」は5ヶ月ぶりのマイナス

2024.11.13

24年9月は「完全失業率」、「有効求人倍率」とも改善

2024.11.12

企業活動分析 ローソンの23年2月期は、「地域密着×個客・個店主義」徹底し増収増益

2024.11.12

企業活動分析 セブン&アイHDの24年2月期は海外事業の影響で減収も過去最高益を更新

2024.11.11

24年10月の「乗用車販売台数」は2ヶ月連続のプラス

2024.11.08

消費者調査データ No.416 レトルトカレー(2024年11月版) 首位「咖喱屋カレー」、3ヶ月内購入はダブルスコア

2024.11.07

企業活動分析 楽天グループの23年12月期は27期連続増収も、モバイルへの投資で4期連続の赤字

2024.11.07

24年9月の「新設住宅着工戸数」は5ヶ月連続のマイナス

2024.11.06

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場  背景にある簡便化志向や節約志向

2024.11.05

企業活動分析 ファンケルの24年3月期算は国内売上がけん引し、3期ぶりの増収増益へ

2024.11.05

企業活動分析 コーセーの23年12月期は、国内好調も中国事業低迷で増収減益に

2024.11.01

成長市場を探せ コロナ禍の落ち込みから再成長する惣菜食市場(2024年)

2024.10.31

月例消費レポート 2024年10月号 消費は緩やかな改善が続いている-政治が消費回復のリスクに

2024.10.31

消費からみた景気指標 24年8月は6項目が改善

週間アクセスランキング

1位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

2位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

3位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

4位 2024.02.02

成長市場を探せ コロナ禍乗り越え再び拡大するチョコレート市場(2024年)

5位 2021.05.25

MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(1)

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area