消費経済レビュー Vol.9より |
アクトビラのコンテンツ開放戦略 -プラットフォームによるモデル分析 |
本稿では、TV向けのインターネット接続ポータルサービスであるアクトビラ**を例に、コンテンツ開放戦略とその効果について、産業組織論で用いられるプラットフォーム・モデルによって分析を行う。 アクトビラのコンテンツをPC上である程度見られるようにすると、アクトビラ向けコンテンツの提供者が増加し、ユーザにとっての魅力が高まる。その結果、アクトビラのユーザ数が増加し、ネット上のコンテンツを楽しむゲートウェイのひとつとしてのTVの地位を確保できる。この戦略は、アクトビラ向けのコンテンツ数が少なく、PCのユーザ数が多い場合に特に有効である。 コンテンツをPCに開放することには、ふたつの効果がある。ひとつは、コンテンツ提供者にとってアクトビラのプラットフォームの魅力が高まり、アクトビラ向けコンテンツが増加することである。もうひとつは、ユーザにとってPCのプラットフォームの魅力が高まり、アクトビラのユーザ数が増加または減少することである。後者については、アクトビラ・PC両プラットフォームの代替性が強いほど減少の効果が強くなる。しかし現実には、個室のPCとリビングのTVとの間の代替性は必ずしも高くなく、むしろ補完的であるとも考えられる。また仮に代替的であるとしても、アクトビラのコンテンツ数が相対的に少ないか、PCのユーザ数が相対的に多い状況では、開放戦略は有効となることが示される。 最適な互換性の程度は状況によって異なり、完全互換が最適戦略であるとは限らない。しかしアクトビラ向けコンテンツをすべてPCで見られるようになったとしても、画質や視聴の快適さ等の点で、TVで得られるのと同等の満足をPCで得ることは難しい。したがって現在の状況では、なるべく多くのコンテンツをPCでも見られるようにすることが、アクトビラのユーザ数増加に寄与すると考えられる。 (2008.06)
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