このデータが示すとおり、見通しは暗いまま。業種業界、企業規模を問わず、厳しい生き残り競争が続いている。
「マーケティングの強化」は、今までもこれからも、企業における永遠のテーマである。しかしながら、中小企業の場合、少ない販管費の中から「本当に必要な」マーケティングコストを捻出するのは容易なことではない。マーケティング政策の立案から、具体的なアクションの構築、調査、分析をアウトソーシングせず、自社でせざるを得ないのが現状だ。
これまでの中堅企業においては、自社の社員が「我流」「個人ワザ」でマーケティングを行ってきた。(大企業でも同じ場合がある)。自分たちで「マーケティング」についてはいろいろ勉強をしているのだが、現実的にはコストをかけられないため、組織として実践できず、出来ることといえば「我流」「個人ワザ」の域を超えることがない。
結果的に、マーケティングアクションが中長期的なアクションではなく、目先の売上を確保するための「単発の施策」で終わってしまい、組織のノウハウにならないというのが、現状である。これまでは、それで何とか通用してきた場合が多かったというのが事実だが、果たして、今後も勝ち抜き続けられるだろうか?答えは、おそらく「NO」だ。
では、「単発の施策」ではない、「中長期的な企業の成長」に資するマーケティングとは何か。それは、基礎基本のフレームとセオリーに則って、採るべきマーケティングアクションを着実に実践し、その成果を振り返る。そして、この一連のアクションを継続していくことである。ここでは、そのフレームとアクションの中でも、もっとも重要度の高い10のアクションを提言する。繰り返すが、これは、あくまでも「基礎基本」である。
図表1.マーケティングアクションを構築する フレームワーク |
このフレームは、大きくふたつの要素から成る。それは「価値創造」と「価値伝達」である。
価値創造は「STP」によってなされる。「STP」とは、「Segmentation:セグメンテーション」「Targeting:ターゲティング」「Positioning:ポジショニング」の三つで構成され、自社が誰に対してどのような価値を提供するのかを明確にするための要素である。
「価値伝達」は「4P+S(営業)」によってなされる。「4P」とは、「Product:製品」「Price:価格」「Place:流通」「Promotion:プロモーション」を指し、ターゲットに対して企業が目的を達成するために、マーケティング機能を組み合わせて統合するというマーケティングミックスによって、価値伝達を行う。
また、「Sales:営業」は、顧客への価値伝達を行う担い手として、重要な位置づけにある。
まとめると、マーケティングの基本は、「STP」で創りだした価値を、「4P+S」で顧客へ伝えるということである。
次章では、マーケティングフレームに沿って採るべきアクションを紹介する。ここで紹介するアクション以外にも、やるべきことは数多あるが、中でも重要なものに絞り込んで紹介したい。
[1]リアルなユーザー像を捉える(セグメンテーション)
はじめに、自社が提供している製品・サービスは、どのようなユーザーに向けて提供されているのかを理解することが重要である。その際、ユーザーをセグメントし、特徴を明確にすることが必要となる。では、どのような切り口で、どのようにセグメントして明確にしていくのがよいのだろうか。分類の変数は無限である。P・コトラーは、その中からの選択基準として、「測定可能であり、アプローチができ、ビジネスとなる市場規模があること」という3条件をあげている。
我々はこれに現場での「納得条件」を加えて考えることが必要だと捉えている。具体的には「ブランドの発達の歴史、技術の発達の歴史、生活の発達の歴史の3点から納得できること」であり、そのことが市場の経験を反映させることになる。
切り口をあげると、消費財マーケティングでは、「地理的変数(地域、気候など)」「デモグラフィック変数(性別、年代、世代、ライフステージなど)」「サイコグラフィック変数(価値意識など)」「行動・態度変数(使用頻度、ロイヤリティなど)」の四つがセグメンテーション変数としてあげられる。一方、BtoBでは、「企業グループの有無、内容」「企業規模」「事業構成」「取引形態」などがあげられる。
あらかじめ仮説を立てた上で、これらの変数をうまく組み合わせて、セグメントを決定していくことが重要である。
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