「NEXT VISION 2007」より | ||
CS3(シーエスキュービック)マーケティング | ||
舩木龍三・合田英了 | ||
| |||||||||
はじめに | |||||||||
みなさん、こんにちは。ただいまご紹介いただきました舩木と申します。よろしくお願いします。 私と合田の2人で、NEXT MARKETING2007と題しまして、来年のマーケティングコンセプトと具体的なアプローチをご提案したいと思います。 そのコンセプトは、ここにありますように「CS3(シーエスキュービック)マーケティング」です。
市場トレンドでご案内させていただいた「生活の趣味化」を中心とする四つのトレンドは、顧客ニーズの多様化と高度化と捉え直すことができます。 お客さまは単なるものの機能・ベネフィットだけでは満足せず、情報的価値やコンテンツ、サービスと一体となったもの、つまりスタイルに価値を見出しています。これが趣味化の本質です。こうした顧客ニーズに対応しようとした結果、産業が融合し市場の多面化が起こっています。 産業融合下では、これまで所属する業界と競争地位によって収益が決まるという図式は成立しません。アンドレイさんからお話いただいたプラットフォームという新しい考え方を導入し、高収益をあげ、イノベーションをリードし、顧客価値を最大化する「市場多面化戦略」が必要だということを、松田の方からご提案させていただきました。 では、顧客価値を最大化するためのマーケティングはどうあるべきか。狙いを明確にしたピンポイントのマーケティングが必要です。そのコンセプトは 「CS3マーケティング」です。 具体的には、これからご提案する四つのマーケティングアプローチです。 では、四つのアプローチについて基本的な考え方をご案内します。
ふたつめは、「ストロング・ブランド・ロイヤリティ」、ブランドロイヤリティづくりについてのご提案です。趣味化に対応して自社ブランドを磨き、強いロイヤリティを創る必要があります。ポイントとなるのは、これまで教科書で習ってきたブランド戦略、具体的には自社ブランド顧客の囲い込み、あるいはCS(顧客満足)を追求するといったアプローチではダメだということです。趣味化がすすむ日本のお客さまには通用しません。新しいアプローチが必要です。なぜなら、お気に入りのブランドが複数あるという「柔らかいロイヤリティ層」が市場の多くを占めているからです。ふたつポイントがあります。ひとつは攻めと守りを明確にしたブランドロイヤリティづくりが必要だということです。ロイヤリティによるセグメンテーションによって自社の固いロイヤリティ層を守るのか、それ以外のセグメントに狙いを絞り、攻めに出るのかを明確にする必要があるということです。もうひとつは、コミュニケーション、説得の仕方を考え直すことです。自社ブランドのよい面ばかりを訴求しがちですが、こうした良い面ばかりを訴求する「片面説得」よりも、良い面、悪い面の双方を提示した「両面説得」の方がブランドの魅力度アップには効果的であることが確認できました。新しいブランドロイヤリティづくりのアプローチ方法をご提案したいと思います。 三つめは、「SFN(スケールフリーネットワーク)、SWN(スモールワールドネットワーク)」という顧客ネットワークに入り込むためのプロモーションの提案です。 趣味化がすすむとマス宣伝のような15秒の説得だけでは限界があります。また、マス宣伝をしなくても売れる商品はたくさんあります。例えばペプシコーラは、アメリカでのプロモーションにはマス宣伝を一切使わないアプローチを展開し成功しております。マーケティングコミュニケーションの原点は、どんなメディア設計をするかではなく、誰を説得するかにあります。SFN、SWNの詳しい説明は後ほどさせていただきますが、SFN、SWNに入り込むようなプロモーションのポイントをご提案させていただきます。 四つめは、「セールス・エリア・フォーカス」。営業戦略のご提案です。弊社の地域経済の分析結果では、人口30万人に満たない都市は学校や病院などといったインフラ機能を維持できなくなり、インフラの充実した人口30万人以上都市への社会移動が起こり、地域格差が拡大します。 こうした変化を先取りし、営業資源の再配分をすると同時に、エリアマーケティングを展開する必要があります。人口30万人以上の都市は全部で71あります。この71都市への営業資源の集中化とチャネル別営業からエリアマーケティングへの転換をご提案したいと思います。 以上が、我々が2007年に向けてご提案したいコンセプト、「CS3マーケティング」の概要です。 それではこれから具体的にご案内したいと思います。 ではまず「コンプリメンタリティ」、補完分析による製品開発アプローチについて、合田よりご案内させていただきます。 (2006.12)
本稿は、当社代表・松田久一による助言・指導をもとに、舩木・合田が代表執筆しております。本稿の内容は、松田からのアイデア・構想に大きく負っております。ここに謝意を表します。あり得べき誤りは筆者の責に帰します。
|