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(1)個人から集団説得へ
人と人とのコミュニケーションのネットワークが、人々の意識や行動に与える影響が大きくなっている。我々が商品を選ぶ時に重視する評判や口コミなどの情報、購入方法、どんな商品を選ぶか、そもそも商品を欲しいと思う動機から他者の存在を意識せずには成り立っていない。また、購入した商品サービスを通じて体験したことを、「仲間内」に伝えて羨ましがられたいという「体験ニーズ」がある。ツイッターでつぶやいたり、フェイスブックや口コミサイトに掲載された体験情報が他の消費者の欲望の対象になったり選択の手がかりとなる。急拡大するスマホなどによってすすむネットワーク化が、コミュニケーションの量と購買行動への影響力をより大きくしている。消費者調査によって、人々のコミュニケーションを分析したところ(消費社会白書2014「新しい消費への離陸」参照)、コミュニケーションのネットワークにおいて、特に情報を波及させる役割を果たす人が存在することがわかった。「仲間内」という特定の集団内で多人数に情報伝達する「スピーカー型」と、異なる集団間に情報をつなぐ「ブリッジ型」である。このふたつのタイプの相乗効果によって、商品サービスの情報がネットワークを通じて波及していく。
一方で、これまでのマーケティングコミュニケーションは、多くの場合に個人としての消費者を前提にしてきた。マス宣伝を通じて、限られた世帯の視聴率調査を元にCMの到達率を算出し、新聞・雑誌広告は発行部数によって媒体費が算出される。企業のHPやSNSなどネットを通じた情報発信量も拡大しているが、消費者の接触率は必ずしも高いとはいえない。ある程度のターゲットが設定される場合もあるが、大海に向かって大きな編み目の投網をなげるようなものである。さらに、マス宣伝、ネット情報、店頭施策などのさまざまなコミュニケーション努力がそれぞれ異なる部門によって設計されて、バラバラに実施されることもありがちなことである。
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