次の時代のマーケティングのためには、何が必要か。セッション3では、事例を交えながら、新しいマーケティングの考え方についてお話ししていきたいと思います。具体的には、セグメント、製品政策、価格政策、プロモーション政策、流通政策の五つについて、取り上げます(図表1)。
先ほど、張り合い消費の相互作用をうまく使うためには、「中の上」のセグメントから攻めていくのが効率的だという話がありました。例えば、今いろんな分野で注目を集めているプレミアム市場でも、「中の上」の人が使っているという予想をしてもらうことが重要です。そうすることで、市場に最も商品を浸透させることができるのです。
では、市場に浸透させていくときに、マーケティングでは何が必要になるか。マルチブランド戦略から、垂直ブランド戦略への転換です。マルチブランド戦略とは、顧客のニーズに合わせてセグメントをつくり、ブランドを多様化していく戦略です。しかし、階層意識が強くなっている今は、垂直ブランド戦略が有効だといえます。これは階層意識をセグメント基準にして、縦方向にブランドを広げる戦略です。
例としては、ファッションブランドのアルマーニの戦略が有名です。アルマーニは、上位ブランドから価格を抑えた下位ブランドまで揃っており、横並びではなく、上から下までをカバーする階層型のブランド配置となっています。これは、アルマーニ型とも呼ばれます(図表2)。
同様の戦略で、最近注目を集めているのが家電業界です。ソニーのハイレゾ商品は、オーディオブームを支えた団塊世代のマニアやクラシック愛好家などに支持され、通常より高額にも関わらず、売れています。もうひとつは、パナソニックです。従来はボリュームゾーンを狙う戦略でしたが、高級路線に変わってきています。これは、松下電器が水道哲学といわれた水道水のように低価格で良質なものを、大量に市場に投入してきた路線からの大きな転換です。
これまで多くの企業で行われてきたマルチブランド戦略は、節目を迎えています。この戦略は、主にキリンビールや花王などがとっている戦略です。
では、垂直ブランド戦略とは、どう展開していけばいいのかについて、セイコーを例に挙げて、説明したいと思います。
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