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市場優位のマーケティング-アメリカを動かす実際のマーケティング
-「MARKET OWNERSHIP」を読む
William A. Sherden
論文紹介 山田 朗彦
構成
 序文 論文紹介
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 第1章 新たな競争手段
 第2章 マーケット・オーナーシップへの道
 第3章 焦点を定めたビジネスを構築する
 第4章 最適な顧客を見極める段
 第5章 顧客への価値を最大化する
 第6章 顧客維持を改善する
 第7章 顧客を獲得する
 第8章 経営を改善する
 第9章 組織経営
 第10章 マーケットオーナーシップを維持する



 この論文の原著「MARKET OWNERSHIP」は1994年に米amacomより出版され一大ベストセラーとなったビジネス書である。このたび日本では弊社が初めて著者の許諾に基づき独自に要約、翻訳掲載することとなった。この著作をとりあげたのは単にベストセラー書だからだけではない。 「事実・事例・理論に基づいた実務家のためのマーケティング」を体現化したものであり、これは当サイトの基本コンセプトでもあるからである。著者であるWilliam A.Sherdenは経営・マーケティングのコンサルタントとして20年のキャリアがあり、彼の豊富なコンサルティングの実務経験から得た知見をもとにこの論文は書かれている。これが、アメリカの数々の著名な学者の論文とは一線を画すものと評価され、ベストセラーとなったゆえんでもある。
 原著タイトル「MARKET OWNERSHIP」は直訳すると「市場所有権」となるが、「あたかも市場を所有するかのごとく、圧倒的な市場優位を獲得するための戦略コンセプト」と理解した方が実際の意味内容には近いだろう。著者自身は冒頭で次のように述べている。「マーケット・オーナーシップとは、強力な競争優位性を獲得するためのユニークな経営手法である。多くの既存の経営処方箋と比較してみても、異なる経営概念を上手く統合し、ビジネスの全体像をより鮮明に描き出している。」。サブタイトルである「The Art&Science of Becoming No.1」の表現にもその自信があらわれている。その着目すべき特徴をいくつか紹介してみる。
 ひとつめは、まず深い顧客理解にもとづく厳密な市場定義(顧客定義)を「マーケットオーナーシップ」の起点としていることである。一見、マーケティングの世界においては非常にベーシックなものであるが、現在の多くの企業に最も欠落しているものではないだろうか。ふたつめは、 「マーケット・オーナーシップ」の構築手順とその長期維持方法がマーケティングだけでなく組織や製造まで幅広く、かつにシンプルに豊富な事例をまじえながら実務的に解説されていること。みっつめは、提供価値の最大化と低コスト効率化が、かつての日本企業が得意であった製造現場におけるTQCや業務改善アプローチとは異なる観点から、もっと広義に整理統合されていること。よっつめは、「マーケット・オーナーシップ」によりメーカー間の価格競争と流通ディスカウントを回避できるとしていること。
 以上の点からもデフレ圧力下において閉塞状況にある戦略立案スタッフやマネージャーの方には興味深く読んでいただけると思う。個別に即時的な解決方法が提示されているわけではないが、現状の問題を本質的に問い直し、新たな戦略構築に向けた指針として十分に活用できるはずである。
 なお、この論文は原文10章構成を数回に分けて要約し、お届けする。

【著者紹介:William A. Sherden】
 経営・マーケティングのコンサルタントとして20年のキャリアがあり、経営関連のジャーナルにも多数の執筆がある。米Mercer Management Consultingで15年間副社長を務めたのち、現在はMarsh & McLennanのコンサルタントとして活躍中。ボストン、マサチューセッツに在住。

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