- 新製品の価格設定はどのように考えればよいのでしょうか?(家電メーカー・商品企画、スタッフ28歳)
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新製品は当然ながら、いかに認知を獲得するか、からマーケティング戦略を検討しなくてはなりません。特に、市場導入の成否は、そのままその商品の市場での生き残りの可否を決定づけてしまうことも多く、価格設定も戦略的に検討する必要があります。
新製品の価格設定の定石にはつぎのふたつがあります。
(1) スキミング・プライシング(上澄吸収価格戦略)
発売時は比較的高価格を設定し、商品の普及とともに徐々に価格を低下させていく価格戦略です。このプライシング方法は、つぎのような高価格でも購入される条件があることを前提としています。
- 新商品発売当初の顧客層は、いわゆる革新者といわれるタイプであると想定される。この層は、多少高い価格でも、自分の生活上で意味があり、先進的である等のプライドを満たすものであれば購入する層である。
- 新商品導入期は競合が少ないと想定されること。価格競争を回避できるこうした高めの価格が市場に定着すれば、商品のイメージ価格を高く維持することも可能。
こうして、高めの価格レベルで吸収し得る顧客を確実にゲットしながら、競合の参入状況(特に、低価格で参入する競合の出現可能性は事前にチェックが必要)を見定めて価格を下げて市場の拡大を目指すのがこの戦略です。市場における上客をすくい取るためスキミング・プライシング(上澄吸収価格戦略)と呼ばれます。このプライシングの最大のメリットは、新製品の開発コストを早期に回収できる点です。
(2) ペネトレーション・プライシング(市場浸透価格戦略)
もうひとつの定石がペネトレーション・プライシングです。先のスキミング・プライシングとは逆に、低価格で市場導入し、販売数量の増大をできるだけ短期間で図り、市場そのものの確立を狙う戦略です。ペネトレーション・プライシングは、需要の価格弾力性が高い商品や競合が早期に低価格で参入することが予想される場合にその初動を制する戦略として有効と考えられます。
ペネトレーション・プライシングを採用する場合は、大量生産を通じたコスト・ダウンが可能であり、利益確保の目処があることについて事前にチェックしておくことが肝要です。また、当然ながら、一旦低価格設定してしまうと、価格を引き上げるためには困難を要します。特に、成熟期に入ると大量販売が難しくなり、価格引き上げ策を議論する可能性が出てきます。価格引き上げのためには、商品のバージョン化など価格変更の根拠が必要であり、将来的にこうした施策が可能であるかについても事前検討が必要です。
図表 新製品のプライシングの定石
新製品の市場導入時には、認知拡大が急務とされ、プロモーション戦略の構築や実践に目を奪われがちですが、一方で、こうした周到なプライシングを併せて検討しておくことが大切です。
参照コンテンツ
- MNEXT 消費の弱い時期の「安売り回帰」は正解か?(2016年)
- MNEXT 情報ディファレンスによる差別化-情報のマーケティング(2003年)
- JMRからの提案 不況下における価格・品質政策-成否の鍵を握る弾力性(2009年)
- JMRからの提案 価格差別化戦略 -利用チャネルをシグナルとした戦略的プライシング
- JMRからの提案 値上げの経済分析(2008年)
- ミクロ経済学入門
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