半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

「需要の価格弾力性」という言葉を聞きますが、どう理解すればよいでしょうか。また、実務上ではどのように活用すればよいでしょうか?(日雑メーカー・営業企画部、31歳)

 一般的には,ある財の価格が上昇するとその財の需要量は減少します。従って、さまざまな価格における需要量を示す需要曲線(DD)は右下がりで示すことができます。「需要の価格弾力性」とは、価格を上げ下げする変化率に対し需要量がどれほど変化するかの比率を指したものです(図表1)。右下がりのため、需要の価格弾力性はマイナスの値になるため、絶対値が用いられます。

 価格弾力性の一般的な見方を整理します。通常、価格弾力性の値が1を超えると弾力的であるといい、1未満の場合は非弾力的であるといった表現をします。これは、価格弾力性が1の場合は、価格の変動率と同じ水準で需要が変動することを示す(弾力性が均衡する)からです。価格弾力性と商品の性質の関係は、次のように整理できます。

  1. 価格弾力性が小さい(価格が変動しても、需要の変動は小さい)
    生活必需品や代替性のある商品が存在しない商品や所得と比べ、支出額の小さい商品などに多くみられる
  2. 価格弾力性が大きい(価格が変動すると、需要の変動も大きい)
    贅沢品や代替性ある商品が存在する場合や所得と比べて支出額の大きい商品などに多くみられる


図表1.価格弾力性とその計算例
図表

 価格弾力性を実務に活用する視点を三つほどあげてみましょう。

1.価格設定の際に配慮する

 例えば、リニューアル商品を市場投入する際、市場特性によって価格設定が変わってきます。仮に弾力性の小さい市場であればこれまでより高い価格設定ができる可能性があり、逆に弾力性の大きい市場では低価格設定を検討する必要も考えられます。価格弾力性だけで価格決定できるわけではありませんが、価格設定時の配慮点として活用します。


2.売価コントロールの基準とする

 同様に、売価コントロールの基準として活用することができます。値下げ政策が効果的な商品は価格弾力性値が1より大きな商品です。逆に、弾力性値が1より小さい商品は(程度にもよりますが)値上げをしても需要減少の影響が少ない商品であると捉えることができます。デフレ経済であると言って、闇雲に値下げ政策を採るのではなく、価格弾力性を基準に入れて商品別の売価コントロール政策を検討すべきです。


3.小売との取り組みの材料に活用する

 価格弾力性は、売価変更を伴う実販売を行った際の販売データがないと算出できません。メーカーであれば取引小売業との共同取り組みやPOSデータ分析などを通じ、価格弾力性を掴むことができます。このことは、小売との間で売価コントロールのための指標を共有する機会も生み出します。小売業は特売依存しがちです。しかし、価格弾力性を考慮しない特売では、売上が増えないばかりか値引きにより利益確保が難しくなるという問題も発生します。小売の売上と利益について議論する材料としてもこの価格弾力性データを活用することをおすすめします。

 スーパーなどの既存店売上は前年割れが続いていますが、その要因は客単価下落によるものです。積極的な売価提案と店頭提案が求められています。




無料の会員登録をするだけで、
最新の戦略ケースや豊富で鮮度あるコンテンツを見ることができます。

いますぐ無料会員登録


参照コンテンツ


関連FAQ


関連用語


特集:2022年、値上げをどう乗り切るか

特集1.値上げの価格戦略

特集2.値上げが企業の収益に与えるインパクトを分析

特集3.消費者は値上げをどう受け止めたのか?


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツ プレミアム会員サービス 戦略ケースの教科書Online


マーケティング用語集

お知らせ

2024.12.19

JMR生活総合研究所 年末年始の営業のお知らせ

新着記事

2024.12.20

消費者調査データ No.418 サブスクリプションサービス 広く利用される「プライムビデオ」、音楽サブスクには固定ファンも

2024.12.19

24年10月の「商業動態統計調査」は7ヶ月連続のプラス

2024.12.19

24年10月の「広告売上高」は、6ヶ月連続のプラス

2024.12.19

24年10月の「旅行業者取扱高」は19年比で83%に

2024.12.18

提言論文 「価値スタイル」で選ばれるブランド・チャネル・メディア

2024.12.18

24年11月の「景気の先行き判断」は3ヶ月連続の50ポイント割れに

2024.12.18

24年11月の「景気の現状判断」は9ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.12.17

24年10月の「現金給与総額」は34ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.12.16

企業活動分析 SGHDの24年3月期はロジスティクス事業不振で2期連続の減収減益

2024.12.16

企業活動分析 ヤマトHDの24年3月期はコスト削減追いつかず3期連続減益

2024.12.13

成長市場を探せ コロナ禍の壊滅的状況からV字回復、売上過去最高のテーマパーク(2024年)

2024.12.12

24年10月の「家計収入」は再びプラスに

2024.12.12

24年10月の「消費支出」は6ヶ月連続のマイナスに

2024.12.11

提言論文 価値スタイルによる生活の再編と収斂

2024.12.10

24年10月は「有効求人倍率」は改善、「完全失業率」は悪化

2024.12.09

企業活動分析 江崎グリコ株式会社 23年12月期は国内外での売上増などで増収増益達成

2024.12.09

企業活動分析 日清食品ホールディングス株式会社 24年3月期は価格改定浸透で増収、過去最高益達成

 

2024.12.06

消費者調査 2024年 印象に残ったもの 「大谷選手」「50-50」、選挙も五輪も超えてホームラン!

2024.12.05

24年11月の「乗用車販売台数」は3ヶ月ぶりのマイナス

週間アクセスランキング

1位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

2位 2024.04.05

消費者調査データ ノンアルコール飲料(2024年4月版) 首位は「ドライゼロ」、追う「オールフリー」「のんある気分」

3位 2024.12.04

提言論文 本格消費回復への転換-価値集団の影響力拡大

4位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

5位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area