半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

小売への販促費が結局、安売りの原資になってしまい、特売が常態化しています。何かよい手立てはないでしょうか?(日雑メーカー・営業企画、スタッフ27歳)

 安売りや特売の原資になっているのは、販売促進を目的に特売時の値下げ分を補填するための「拡売費」で、一定の取引数量に応じ割り戻すリベートとは区別されています。拡売費は自社商品の販売計画の進捗状況や店頭での競合商品の動向などを見ながら機動的に使われるため、支出が膨らむ性格を持っているといえます。また、1990年代前半から消費財メーカーの多くで採用された大手組織小売対応の営業組織とそこでの個別対応がこうした流れに拍車をかける結果となったことも指摘できます。

 問題は、特売・安売りの常態化によるブランドイメージ低下と販促費増大による収益力の低下です。

 つぎの三つの対応策を検討してみてください。

(1) 「行為謝礼」への転換

 小売の値引き補填ではなく、小売本来の「拡売行為」を引き出すための費用への転換を基本施策とします。この行為謝礼(アローワンス)には様々なものがありますが、店頭でのブランド育成、拡売を目的とするものとしてつぎの四つをあげることができます(図表)。

  1. 陳列アローワンス
  2. 販売促進アローワンス
  3. 広告アローワンス
  4. 契約アローワンス

 現実的には、アローワンス契約を行っても小売側が安売り原資として使用する可能性は残りますが、優位置陳列が出来るようになるなど、ブランド育成のための施策を実践することができます。


図表 アローワンスの例
図表

(2) 全社的な「販促費削減」を対外的に宣言する

 上記のような(広義の)販売促進費の役割の変更は、全社的な取引制度の問題です。「安売りの原資化」以外にも、「後払い型のリベート」は、メーカー・流通の双方の損益管理が困難な上、処理コストがかかる、また、「販売期間契約」になるため期末集中型の販売活動が横行するなど弊害も指摘できます。根本的には、リベート制度そのものを見直して、費目の内容変更や体系の簡素化などを検討する必要があります。その上で、ブランド育成に機能しない拡売費の削減を検討し、全社方針として思い切って対外的に宣言することです。これは、値引きに依らない販売促進の方策を小売と共同で検討していくことの宣言にもなります。

(3) 提案営業の進化

 拡売費の削減は現場の営業マンからの反発を招きます。営業企画スタッフとしては、条件に依らない提案営業の武器を準備する必要があります。この際の鍵は、ブランドの提供する価値を問い直し、生活での役立ちがリアルに伝わる表現のメッセージを開発することです。そして、このメッセージを適切な店頭ツールに落とし込み、各種アローワンスと組み合わせた「売り方の提案」をする営業へと進化を図ることです。



参照コンテンツ


関連用語


おすすめ新着記事

消費者調査データ カップめん(2025年4月版)別次元の強さ「カップヌードル」、2位争いは和風麺
消費者調査データ カップめん(2025年4月版)別次元の強さ「カップヌードル」、2位争いは和風麺

調査結果をみると、「カップヌードル」が、ほぼ全員に認知があり、4分の3に購入経験があり、半数弱が3ヶ月以内に購入、と圧倒的な強さをみせるなど、ロングセラーブランドへの上位集中が鮮明な結果となった。背景には、昨今の値上げ続きで強まる消費者の節約志向があると考えられる。「失敗したくない」という意識が安心感のあるブランドに向かっているのだ。

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター チョコレートの今後購入意向は80%以上! 意外にも男性20~30代と管理職が市場を牽引
「食と生活」のマンスリー・ニュースレター チョコレートの今後購入意向は80%以上! 意外にも男性20~30代と管理職が市場を牽引

チョコレート商品の値上げが続くなか、成分や機能を訴求したチョコレートが伸びている。今回はどのような人がどんな理由でチョコレートを食べているのか調査した。

成長市場を探せ キャッシュレス決済のなかでも圧倒的なボリュームを誇るクレジットカード決済は、2024年、3年連続の2桁成長で過去最高を連続更新するとともに、初の100兆円台にのせた。ネットショッピングの浸透も拡大に拍車をかけている。  キャッシュレス市場の雄、クレジットカードは3年連続過去最高更新(2025年)
成長市場を探せ キャッシュレス決済のなかでも圧倒的なボリュームを誇るクレジットカード決済は、2024年、3年連続の2桁成長で過去最高を連続更新するとともに、初の100兆円台にのせた。ネットショッピングの浸透も拡大に拍車をかけている。 キャッシュレス市場の雄、クレジットカードは3年連続過去最高更新(2025年)

キャッシュレス決済のなかでも圧倒的なボリュームを誇るクレジットカード決済は、2024年、3年連続の2桁成長で過去最高を連続更新するとともに、初の100兆円台にのせた。ネットショッピングの浸透も拡大に拍車をかけている。



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツ プレミアム会員サービス 戦略ケースの教科書Online


マーケティング用語集

お知らせ

2025.03.06

クレジットカード決済に関する重要なお知らせ

2025.04.17

JMR生活総合研究所 ゴールデンウイーク期間中の営業のお知らせ

新着記事

2025.04.18

消費者調査データ カップめん(2025年4月版)別次元の強さ「カップヌードル」、2位争いは和風麺

2025.04.17

25年2月の「商業動態統計調査」は11ヶ月連続のプラス

2025.04.16

25年3月の「景気の現状判断」は13ヶ月連続で50ポイント割れに

2025.04.16

25年3月の「景気の先行き判断」は7ヶ月連続の50ポイント割れに

2025.04.15

25年2月の「消費支出」は4ヶ月ぶりのマイナスに

2025.04.14

提言論文 ブランド価値ランキング - 価値実現率の低い選択的耐久財

2025.04.14

企業活動分析 アップルの2024年9月期は、サービス事業過去最高で増収増益

2025.04.11

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター チョコレートの今後購入意向は80%以上! 意外にも男性20~30代と管理職が市場を牽引

 

2025.04.10

25年2月の「家計収入」は2ヶ月連続のマイナス

2025.04.09

25年2月の「現金給与総額」は38ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

 

2025.04.08

25年2月は「完全失業率」は改善、「有効求人倍率」は悪化

2025.04.07

企業活動分析 日本ハムの24年3月期は食肉事業、加工事業ともに好調で増収増益

2025.04.07

企業活動分析 丸大食品の24年3月期は価格改定の効果もあり増収増益

2025.04.07

月例消費レポート 2025年3月号 消費は回復傾向が続いている - 海外発の波乱要因が消費回復の妨げとなる可能性には要注意

2025.04.04

25年3月の「乗用車販売台数」は3ヶ月連続のプラス

2025.04.03

25年2月の「新設住宅着工戸数」は10ヶ月ぶりのプラスに

週間アクセスランキング

1位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

2位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

3位 2025.04.11

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター チョコレートの今後購入意向は80%以上! 意外にも男性20~30代と管理職が市場を牽引

4位 2024.10.24

MNEXT 日本を揺るがす「雪崩現象」―「岩盤保守」の正体

5位 2024.11.06

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場  背景にある簡便化志向や節約志向

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area