卸売機能原理とは、流通における卸売業の介在の根拠を論じた原理です。その代表的な原理は、「取引数量最小化の原理」と「不確実性プールの原理」です。M.ホール(1948)によって提唱されました。
- 取引数量最小化の原理
取引数量最小化の原理とは、流通取引において卸売業者が介在することで、市場における取引数が減少するという原理です。
例えば、製造業者が10社、小売業者が5社存在している場合、市場で行われる取引数は10(製造業者数)×5(小売業者数)=50通りとなりますが、卸売業者が介在した場合、製造業者も小売業者も卸売業者のみと取引すればよいので市場で行われる取引数は10(製造業者数)+5(小売業者数)=15通りとなります。卸売業者が存在することで、製造業者、小売業者は、取引を効率化することができるのです。 - 不確実性プール原理
不確実性プール原理とは、流通取引において卸売業者が介在することで、市場における在庫数が減少するという原理です。
例えば、小売業者が10社存在している場合、需要の変化に対応するために各々が在庫を50個必要であるとします。そのときの市場の在庫は10(小売業者数)×50(在庫数)=500個です。しかし、卸売業者が介在して商品を速やかに供給できれば、小売業者は50個よりも少ない在庫で需要の変化に対応できます。卸売業者が介在することで、小売業者は余計な在庫を減らし、在庫スペースも効率化させることができるのです。
このようにユーザーにとっては、商品を購入する動機が製品の持つ機能やサービスだけとは限らないことが多くあります。このため、企業側の視点で考えると、効果的なマーケティング戦略は下記のようになります。
自社製品の既ユーザーに対しては、別の製品に乗り換えられないようにすることが必要なので卸売機能原理をできるだけ高めておくことです。携帯電話の例で言うなら、退会時の費用を高くする、自社サービスを使えば使うほどお得になる価格設定をする、などです。
近年、パソコンとインターネットの普及によって電子商取引の利用者が増えてきています。それに伴って、製造業者と消費者が直接取引きするような直接流通が増加しています。電子商取引実態調査(経済産業省)によると、企業-消費者間(B to C)の電子商取引の市場規模は2016年で15.1兆円(前年比9.9%増)でした。
今後は、直接取引が増加していきますが、卸売業には、需給の調整、品揃えの形成、流通コストの削減の機能があるため、引き続き重要な役割を担っていくものと考えられます。
おすすめ新着記事
消費者調査データ サブスクリプションサービス 広く利用される「プライムビデオ」、音楽サブスクには固定ファンも
調査結果を見ると、「Amazon プライムビデオ」が全項目で首位となった。「プライムビデオ」は認知率で認知率は8割強、利用経験では唯一4割強、今後の利用意向でも3割を超えている。
消費者調査データ シャンプー(2024年11月版) 「ラックス」と「パンテーン」、激しい首位争い
調査結果を見ると、「ラックス(ユニリーバ)」と「パンテーン(P&G)」が複数の項目で僅差で首位を競り合う結果となった。コロナ禍以降のセルフケアに対する意識の高まりもあって、シャンプー市場では多様化、高付加価値化が進んでいる。ボタニカルやオーガニック、ハニーやアミノ酸などをキーワードに多様なブランドが競うシャンプー市場の今後が注目される。
消費者調査データ レトルトカレー(2024年11月版) 首位「咖喱屋カレー」、3ヶ月内購入はダブルスコア
調査結果を見ると、「咖喱屋カレー」が、再購入意向を除く5項目で首位を獲得した。店頭接触、購入経験で2位に10ポイント以上の差をつけ、3ヶ月内購入では2位の「ボンカレーゴールド」のほぼ2倍の購入率となった。