トレーサビリティ(Traceability)とは「Trace(追跡)」と「ability(可能)」から成る語で、「追跡可能性」を意味します。製品に関するトレーサビリティとしては、対象物に関する生産、加工、流通の情報の追跡と遡及が可能であることを指し、主に食品、郵便や宅配物、家電リサイクル、医療などの領域で求められているシステムです。
特に関心が高くなっているのが食品分野でのトレーサビリティです。農林水産省の定義によれば、「生産・処理・加工・流通・販売のフードチェーンの各段階で、食品とその情報を追跡し、遡及できること」ということになります。そもそも「トレーサビリティ」という概念が一般に広まったのは、BSE問題を受け、2004年に「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」(牛肉トレーサビリティ法)が施行されたことからです。さらに、遺伝子組み換え作物や偽造表示などの問題をきっかけに、消費者の食の安全への意識は近年非常に高まっています。このような背景があり、食品分野において、トレーサビリティシステムの確立は重要な課題となっています。
トレーサビリティは消費者にとって安全性や利便性といったメリットがある一方で、事業者にとって負担となることは否めません。しかし、社会的な要請は高まっており、政府主導でもその整備は求められています。一方、事業者にとってもメリットはあります。例えば、製品に問題が生じた場合、確立されたトレーサビリティのもとでは、対象物と原因の特定を迅速に行うことができるため、その損害を最小限で抑えることができます。さらに、消費者から信頼を得ることにもつながり、製品や企業の価値を高めることができるというのも大きなメリットです。
現在は製品の個別認識に二次元バーコードで管理しているのが一般的ですが、将来的にはユビキタス・コンピューティングによるICタグを用いた、より高度な管理への期待があります。今後、高度な情報ネットワークが形成されたユビキタス社会の到来により、社会的基盤としてトレーサビリティシステムが整備されることが予想されます。
おすすめ新着記事
消費者調査データ レトルトカレー(2024年11月版) 首位「咖喱屋カレー」、3ヶ月内購入はダブルスコア
調査結果を見ると、「咖喱屋カレー」が、再購入意向を除く5項目で首位を獲得した。店頭接触、購入経験で2位に10ポイント以上の差をつけ、3ヶ月内購入では2位の「ボンカレーゴールド」のほぼ2倍の購入率となった。
「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場 背景にある簡便化志向や節約志向
どんな人がパンを食べているのか調べてみた。主食として1年内に食べた頻度をみると、食事パンは週5回以上食べた人が2割で、特に女性50・60代は3割前後と高かった。パン類全体でみると、朝食で食事パンを食べた人は女性を中心に高く、特に女性50代は6割以上であった。
成長市場を探せ コロナ禍の落ち込みから再成長する惣菜食市場
コロナ禍で打撃を受けた市場のひとつに惣菜市場がある。特に外出自粛の影響を受けた百貨店の惣菜などが落ち込んだ。しかし、翌21年には早くも持ち直し、22年、23年と2年連続で過去最高を更新した。