フィンテック(Fintech)とは、金融や財政と訳される「ファイナンス(Finance)」と、科学技術や技術と訳される「テクノロジー(Technology)」というふたつの言葉の組み合わせによって生まれた造語です。その起源からもわかるように、フィンテックとは、金融とITの先端技術を組み合わせたサービスや、その領域そのものを指す言葉といえます。
ただ、フィンテックサービスとはこういうものだと端的に答えることはできません。なぜなら、金融機関が提供しているサービスだけを考えても、資産の管理、資産の運用、資産運用への助言や代行、住宅ローンや教育ローンなどの融資など枚挙に暇がなく、一口に金融サービスといっても多岐に渡るためです。対象が法人、個人を問わず、存在するすべての金融サービスやセキュリティーなど、金融に係るすべてのサービスがITと組み合わさることにより、フィンテックというカテゴリーに括られることとなります。
フィンテックは新興国であるアフリカとアメリカを中心に、それぞれ別々の要因により普及が始まりました。アフリカでフィンテックの普及を先駆けたのはケニアでした。ケニアでは、都心で働く若者が郊外に住む家族へ仕送りをするというのが一般的でした。一方で2010年頃までは、郊外にATMが不足していたこと、そもそも銀行に新規口座を開設するための敷居が高かったことにより、家族への送金は第三者を通して行われることが常態化していました。第三者へ委託することによって、預けた額の100%が家族に送られることは稀であり、こうした背景から安全な送金手段が求められていました。そんな中、2010年に携帯電話ひとつで送金ができるM-PESAというサービスが生まれ、携帯電話の普及率の高さも起因して一気にサービスが広がったのです。
他方、アメリカでは2000年代末からサブプライムローンによる金融危機、リーマンショックなどによって既存の金融機関に対する不信感が高まっていました。また同じく、金融危機により大手金融機関から優秀な人材が大量にリストラされ、既存の金融機関のサービスにとらわれない独自のサービスを生み出そうという機運が高まりました。これにより、品質の高いフィンテックサービスが生まれ、そして若年期からスマートフォンやSNSサービスに慣れ親しんだミレニアル世代の台頭という背景もあり、広く普及が始まりました。
日本におけるフィンテックは当初、先に挙げた2国のような急速な発展は見られませんでした。理由は、ATMの普及など金融インフラが十分に整っていたことと、超低金利にも関わらず銀行の普通預金への信頼が高かったためだといえます。一方、2016年4月には日本銀行が国内におけるフィンテック発展のための取り組み強化を狙い、Fintechセンターを立ち上げるなどの取り組みを開始しており、2017年7月現在70以上のフィンテック企業が国内に存在するといわれています。
日本人は資産運用への関心が薄く、保有資産に占める預貯金の割合が高いことが問題となっています。フィンテックの発展に伴って良質で魅力的な金融サービスが生まれることで、政府が掲げる「貯蓄から投資へ」を加速させることが期待されています。
関連用語
参照コンテンツ
- 戦略ケース 導入進むロボアドバイザー―フィンテックは貯蓄を投資に誘導できるか(2017年)
- マーケティングに生かすデータサイエンス入門
- マーケティング用語集 シンギュラリティ
- FAQでわかるマーケティング実務と戦略経営入門
- マーケティングFAQ
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