人工知能とは、人間のような思考能力や学習能力を人工的に作り出す技術を指す。近年急速に研究が進んでおり、既に人工知能を搭載したアプリや、サービスが続々とリリースされている。
AIの機能としては、ニューラルネットワークによる顔認識や、ディープラーニング(機械学習)が挙げられる。
大まかにいえば人間が知識を使ってするようなこと、問題の解決を機械にさせようとするものだ。詳しく分類すると、問題の答えを自動的に「探索」する方法、どのように知識を表現するかという「知識表現」、過去の知識から新しい情報を導く「推論」、最適な計画を組み立てる「プランニング」、そのなかで最適な選択を行うための「意思決定」、そして自動翻訳など言葉を機械的に処理する「自然言語処理」、音声や画像データを言葉や概念に結びつけて処理する「音声認識」、「画像認識」、そして実世界に対して直接アクションを起こす「自動運転」や「ロボット」、身近なものではAmazonの「レコメンド」など、研究の対象領域は多岐に渡る。
人工知能の全体的な研究領域を把握するため、簡単に歴史を紹介する。実はこれまでも人工知能のブームがあり、冬の時代もあった。今回は第3次のブームである。
AIの歴史
1945年にノイマン型コンピュータが発表され、機械による計算が徐々に発展していった。そして、「人間の知的活動を行う機械」を作る試みが始まった。1956年、マッカーシーなどの数学者や心理学者らの会議で、「人工知能」という言葉が初めて使われた。しかし、高度な計算処理はできても、現実的な問題は解決できなかった。「知識」と「判断力」の欠如が指摘され、第1次ブームは終わった。
1970~80年代は、人の知識を記号で記述して、それを操作する人工知能が提唱された。1982年ごろ日本でも、第5世代コンピュータプロジェクトと呼ばれる、人工知能のプロジェクトがスタートしている。知識を記号論理で記述し、それとともに推論システムを開発して、高度な知能を実現することを目指していた。応用としては、エキスパート・システムという人間の専門家の意志決定を真似るシステムが多数構築されている。問いに対する「知識」と「判断力」は身についたものの、人間の何気ない「常識」がコンピュータにはなかったと言われ、第2次ブームも終焉した。
1990年代~2000年代前半までは一時期、人工知能冬の時代とも呼ばれた。ただし、ネットワーク技術の発達で、データ量が爆発的に増加する環境下にあった。また、今日発展しているニューラルネットワーク、データマイニング、サポートベクターマシン(SVM)、スパースコーディングといった機械学習に関連する技術も研究されていた。そして2010年代に入り、この分野の研究がさらに進むと、画像認識などで飛躍的な成果を出すようになった。その結果、高度な処理方法を自動的に獲得することが一部可能になり、再び機械学習がブームとなっている。
このように人工知能の研究史を大きく分けると「黎明期」→「論理に基づいた方法」→「機械学習」(+α)となる。人工知能には何度か異なるアプローチのブームがある。
ただし今回のブームは、これまでとは異なっている。今回のポイントは、
- 環境として、大量のデータ(ビッグデータ)が容易に手に入るようになったこと
- ハードウェアとして、速くて安い並列処理ができる演算装置が入手可能になってきたこと
- ソフトウエアの面では、画像認識などの複雑な処理を自動的に学習できるようになったこと
などだ。医療診断におけるIBMのワトソンの利用をはじめ、身近な事例ではディープラーニングを用いたGoogle翻訳の改善や、株の自動取引、運転の補助システムなど、広い分野で人工知能が活用されている。
米国の労働省のデータを使って702の職種を分析したFrey, C. B.らの研究によれば、今後10~20年という早い時期に、コンピュータ化によって約47%の職種が自動化されるリスクが高いとしている。また、90%以上の確率で消える職種としては、「テレマーケター」、「時計の修理工」、「データ入力作業員」、「保険引受時の審査担当」、「簿記・会計・監査などの担当者」、「不動産登記の審査・調査」などが挙げられている。
また、ジャストシステムによる職業別の仕事と人工知能に関する実態調査では、調査対象者の仕事が人工知能(AI)に置き換わるかという質問に対して、「販売・接客」が1位で14.6%、2位が「企画・マーケティング(14.3%)」となり、「将来的に全てが人工知能やAIに置き換わると思う」と答えた人が高かった。
人工知能などの技術についての予測に、「2045年問題」がある。これは、2045年に世界は技術的な特異点(シンギュラリティ)を迎えると指摘していることを指す。具体的にいうと、コンピュータが人類の知性を超え、その結果として人々の生活が後戻りできないほど大きな影響を受けるとしている。
高度に発展したコンピュータによって産業や職業がどう変化していくのか大きな関心が寄せられている。
参照コンテンツ
- マーケティングに生かすデータサイエンス入門
- 戦略ケース 導入進むロボアドバイザー ―フィンテックは貯蓄を投資に誘導できるか(2017年)
- マーケティング用語集 ディープラーニング
- マーケティング用語集 マーケティングオートメーション
- マーケティング用語集 フィンテック
- マーケティング用語集 シンギュラリティー
- マーケティング用語集 ビッグデータ
おすすめ新着記事
消費者調査データ レトルトカレー(2024年11月版) 首位「咖喱屋カレー」、3ヶ月内購入はダブルスコア
調査結果を見ると、「咖喱屋カレー」が、再購入意向を除く5項目で首位を獲得した。店頭接触、購入経験で2位に10ポイント以上の差をつけ、3ヶ月内購入では2位の「ボンカレーゴールド」のほぼ2倍の購入率となった。
「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場 背景にある簡便化志向や節約志向
どんな人がパンを食べているのか調べてみた。主食として1年内に食べた頻度をみると、食事パンは週5回以上食べた人が2割で、特に女性50・60代は3割前後と高かった。パン類全体でみると、朝食で食事パンを食べた人は女性を中心に高く、特に女性50代は6割以上であった。
成長市場を探せ コロナ禍の落ち込みから再成長する惣菜食市場
コロナ禍で打撃を受けた市場のひとつに惣菜市場がある。特に外出自粛の影響を受けた百貨店の惣菜などが落ち込んだ。しかし、翌21年には早くも持ち直し、22年、23年と2年連続で過去最高を更新した。