季刊 消費経済レビュー |
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I.これからの景気をどう読むか: 本格回復への転換点 【要旨】
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2002年4-6月期以降、日本の実質GDPはプラス成長を続けている。財貨サービスの輸出から民間設備投資、家計消費支出へと、時間の経過とともにプラス成長の項目が増加していった点は、今回の景気回復の特徴として注目される。 主要なシンクタンク並びに金融機関各社が示したシナリオによれば、日本経済が今後も景気回復基調を保ち続けられるか否かの判断の分岐点は、「輸出の好調が持続するか否か」と「国内需要の堅調さが裾野の拡がりを見せるのか否か」のふたつに集約でき、将来起こり得るシナリオとしては四つの可能性が考えられる。各社の間で実現可能性が高いと予想されているのは、海外需要並びに国内需要ともに堅調に推移していく「本格回復シナリオ」と、海外需要は好調さを保つものの内需は伸び悩みを見せる「輸出頼みシナリオ」のふたつであり、両シナリオの成否を左右する焦点は「国内需要の堅調さが裾野の拡がりを見せるのか否か」にある。 各社のシナリオの帰趨を左右するふたつの分岐点のそれぞれにつき直近の動向を整理すると、まず海外輸出、特に中国向け輸出は拡大基調にあり、今後も更なる拡大が見込まれる。 国内需要の動向を左右する第一の要因である設備投資については、中国向け需要並びにデジタル家電需要関連分野を中心に増加が続いている。今後、当初の計画どおりに設備投資が実現していくならば、設備投資増の分野が裾野の拡がりを見せ、国内需要も堅調な推移をしていくことが期待できる。 国内需要の動向を左右するもうひとつの要因である消費動向については、目下、消費者マインドの好転が認められる。インターネットモニター調査の結果を見ると、楽観的なシナリオの下では、消費者マインドの改善が経済全般に拡がっていく可能性が見込まれる。しかしながら、今後の景気見通しについては消費者間で認識の格差が見受けられ、現時点で「景気が良くなっていくとは思えない」という態度を崩さない一群の人々が存在し続けている。 日本経済が今後も好況を維持していくためには、消費者マインドの改善が今以上に進展しなければならない。そのためには、景気回復について懐疑的態度を崩さない一群の人々が置かれている環境条件を変化させて、彼らの景気認識を転換させる必要がある。同時に、設備投資や消費支出の増加が企業業績の改善へとつながる更なる好循環が、持続していかなければならない。この好循環が持続するためには、両者の媒介項となっている国内向け販売が好調さを保つことが必要であり、国内向け販売の好調さを支える前提として、内需が経済全体への裾野の拡がりを見せることが欠かせない。 景気回復を支えている人的条件である消費者マインドの改善と物的条件である需要の裾野の拡がりとは、互いが互いを支えあう構造になっており、両者がそろって初めて、景気の本格回復が実現可能となる。 (2004.09)
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