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季刊 消費経済レビュー
I.Macroeconomic Outlook for Japan

 2004年第2四半期にける実質GDP成長率の急落以降、日本の景気は減速傾向にある。民間最終消費支出の低迷が日本の景気の足を引っ張っているが、財貨・サービスの輸出と民間企業設備投資が下支え要因として健闘し、景気の本格的な悪化は回避されてきた。
 シンクタンク各社の想定シナリオを見る限り、これまで景気判断を分ける材料と見られてきた輸出と在庫調整については、おおむねコンセンサスが形成されつつある。2005年度の日本の景気をめぐる判断の分かれ目となる材料は、「設備投資動向」「雇用・所得環境」「個人消費動向」という内需動向に移りつつある。
 内需動向を左右する各項目の動きを整理すると、「設備投資動向」については、2004年度における予想以上の好調ぶりの反動として2005年度はマイナス基調の予想が出されている。「雇用・所得環境」のうち、雇用については回復基調が鮮明化している。所得の伸びはまだ水面下にあるが、トレンドとしてはプラス成長へ浮上する兆しがうかがえる。「個人消費動向」については、消費者マインドには悪化の兆しはないが、個人消費は全般的に減少傾向で推移している。消費の中身を見ても、2004年10月以降、選択的支出も基礎的支出もともに、伸びはマイナスを記録している。
 2005年度の内需動向に関するシンクタンク各社の想定シナリオを総合すると、個人消費については弱気スタンスを基本線とした上で、設備投資について強弱どちらに振れるかが今後の帰趨に関する判断の分かれ目になると見ているようである。
 弊社の独自調査によれば、消費者の景気認識スタンスとして、現状では悲観的認識が圧倒的多数派となっているものの、今後の景気の見通しに関しては悲観派と楽観派の差がより小さなものとなっている。今後の支出意向については、日常的支出主導で減少傾向は続くものの、選択的支出が若干強含みで推移する見込みである。中でも、デジタル新三種の神器をはじめとするいくつかの高額耐久消費財・サービスについては、今後も好調な販売が見込まれている。消費環境としては総悲観の支出抑制モードというには程遠く、現状における全体的な減少見通しを過大評価すべきではないであろう。
 以上の議論より、2005年度の日本経済は、雇用・所得環境は好転し回復モードに入ったものの、失速傾向にある個人消費が所得の成長ペース並みの増勢基調に持ち直すと判断するのは時期尚早であり、かつ2005年度の設備投資は2004年度の大幅な伸びに対する反動減から堅調さを保つのは難しいと見込まれる。よって弊社は、「雇用・所得環境の好転にもかかわらず、消費も投資もともに回復の端緒が見えず内需は鈍化する」という「内需鈍化シナリオ」を、2005年度の日本経済に関する基本シナリオとして採用したい。代替的シナリオとしては、2005年度も設備投資の堅調さが崩れなかった場合を想定した「投資主導安定回復シナリオ」(楽観シナリオ)と、雇用・所得環境の好転が実現しなかった場合を想定した「内需失速全面化シナリオ」(悲観シナリオ)のふたつを、次善の有力候補として挙げておこう。
(2005.05)


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