消費経済レビュー |
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III.ポイントか現金割引か-ポイント・システムの実証分析 | |
ポイントカードは今や、我々の生活の中に深く浸透している。その背景には、蓄積できて現金の代わりに利用できるなどといった、ポイントがもつ貨幣的機能への高評価が挙げられる。ポイントカードへの満足度を高める鍵となる、「ポイントのためやすさ」「割引率」「買ったりもらえたりする商品・サービスの魅力」の三つに共通する特質に着目すると、ポイントがもつ貨幣的機能として最も重視されているのは、貨幣が有する本源的機能のうちで最も重要な機能である「一般的交換手段機能」、つまり財購入のための支払手段としての流通力である。 本稿では、ポイント付加と現金割引とで消費者による効用評価にどのような違いがあるのかを解明するために、一定の仮定の下で、ポイントの効用関数の推計を行い、ポイント付加と現金割引との間の質的・量的な差異を明らかにすることを試みた。ここでは、ポイントと、その最も有力な代替物である貨幣との間での比較対照のための指標として、購買力を位置づけ、それを効用の代理指標とみなした。ポイントにおける購買力の劣後の程度は、効用関数における曲線の凹性の程度で測ることができ、そうした曲線の歪曲度を測るものとして、経済学では「危険回避度」という指標が広く用いられてきた。よって、ポイントの効用関数の推計の焦点は、危険回避度を表すパラメターの推計に帰着される。 また本稿では、ポイントと現金の効用評価に対して受け取る時点の差異も導入し、金銭評価項目の変数を「現在の現金」「現在のポイント」「将来の現金」「将来のポイント」の四つに区分した上で、危険回避度だけでなく割引率も併せて推計できる仕組みを考案している。推計のベースとなるデータは、前述の「ポイントカードシステム利用実態調査」の中で調査対象者から得られた、ポイント付与額と現金割引額との比較衡量に関する4種類の回答結果、具体的には「現在のポイント対将来のポイント」「現在の現金対将来の現金」「現在の現金対現在のポイント」「将来の現金対将来のポイント」の四つの回答結果を利用している。 推計結果から導かれる主な含意は、次のように整理できる。まず、ポイントは、現金とは質的には明らかに異なったものではあるが、効用関数のパラメターの値を見る限り、その質的な差の程度は極めて小さい。その意味で、ポイントと現金の顕著な類似性が認められる。しかしながら、ポイントと現金の間に存在する質的に見て微少な差が、効用評価としては、ポイントと現金との間に量的に見て顕著な差をもたらしている。 (2007.06)
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