消費経済レビュー Vol.10 |
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値上げへの対応行動の解明 -強まる節約意識と先行する購入数量調整 |
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原油価格をはじめとする商品市況の高騰は、2008年に入り消費者に身近な商品の値上げの波として家計に押し寄せ、消費者の間に広範かつ根強い物価上昇認識を植え付けた。定着した物価上昇認識は、消費者の節約意識を強め、広範な節約行動を促している。 日常的支出は物価上昇の影響を直接被る形で出費が増加し、選択的支出に切り詰めのしわ寄せがきている。意向面では日常的支出と選択的支出はともに、値上げの認識や節約意識によって支出抑制の方向に動きつつある。消費者における支出抑制の努力は、購入数量や頻度の削減といった数量調整の形で具体化しつつあるが、購入価格帯の切り下げや購入商品の品質・機能の切り下げといったトレーディングダウンの動きの本格化にはまだ至っていない。 足許の物価上昇は沈静化しつつあるが、定着した物価上昇認識、とりわけ物価上昇見通しが払拭されない限りは、購入数量調整の動きは今後も続くと目される。しかしながら、出費の増加により切り詰め意欲が強まった分、それまで買っていた商品とそれよりも購入価格帯が低い商品または品質・機能の低い商品との間で、コスト・パフォーマンスを厳しく見極める姿勢は今後も強まると目される。 景気の悪化による雇用・収入環境の悪化は、消費者の支出余力を減少させることで節約意識を促し、コスト・パフォーマンスを見極める動きを加速させる。その結果として、トレーディングダウンの動きが今後顕在化すれば、これまでの好況下で拡大した商品ラインナップにも淘汰・選別の圧力が高まり、消費者全体の支出も更に絞り込まれ、消費低迷が本格化する可能性がある。 (2008.12)
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