消費経済レビュー Vol.12 |
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消費者から見る経済政策の有効性と限界 | |
本稿では、麻生内閣下での経済対策を材料に、消費者から見た経済政策の有効性と限界を、弊社インターネットモニターへの調査結果をもとに検討・考察している。 麻生内閣下で打ち出された経済対策の効果を消費者は冷静に見極めており、そのうち「省エネ家電へのエコポイント」「環境対応車の新規購入に対し自動車に関する税の一部免除("エコカー減税")」「環境対応車への買い替え時に登録車で金額補助("エコカー補助金")」の三つは、消費者から高く評価されている。 これらの対策は、ダイレクトに金銭的メリットを実感でき、そのメリットが一定期間内に特定の購買行動を採らない限り享受できず、他財への需要に影響を与えない形で需要の上乗せを図れるものである。こうした耐久財需要を直接刺激する対策は、ミクロ経済学における部分均衡的な市場介入政策に類するものであるが、消費者の支持も高く、需要喚起の効果の強いものと評価される。 不況期の経済政策はマクロ経済学では総需要管理政策として位置づけられ、そのひとつが政府の財政支出をコントロールする財政政策である。財政政策の要諦は、国による借金で今と将来の支出のバランスをどう保つかにあり、消費者に対しては今と将来のどちらを大事にするかの判断を迫るものである。弊社モニターへの調査結果によると、国の借金には消極的で、景気対策よりも国の借金抑制を重視するという人が消費者の多数派であり、財政保守主義の姿勢が消費者の間では認められる。国の借金返済のための増税は、消費者にとって受け入れがたいが避けがたいものと見ており、今から2~3年内という遠くない時期に起こるものと予想している。 財政政策による需要喚起効果の有無は、消費者における中立命題の妥当性の程度に左右される。中立命題とは、将来の消費税率上昇により税負担の増加が予想される場合、消費者が生涯にわたる予算制約式に基づいて最適化行動をするならば、消費者の支出は税率上昇による税負担の増加を予想した時点から減少する、というものである。調査結果によると、将来の増税タイミングを踏まえた今後の支出予定として、「今から減らしたい」と答えている3割強は少なくとも中立命題に合致する層であるのに対し、「税金が変わった時点で減らしたい」「支出は税金とは無関係に決める」「わからない」と答えている4割弱は中立命題が妥当しない層と考えられる。 財政政策による需要喚起の効果の大小は、支出規模それ自体よりもむしろ、中立命題が妥当しない4割弱の層へのインパクトの与え具合にかかっている。中立命題が妥当しない層の見極めと、需要喚起効果の高い耐久財需要を直接刺激できる巧みな市場介入という、ミクロの視座とマクロの視座のバランスを保った政策こそが、消費者からの高い支持と強い需要喚起効果の実現を可能にするのである。 (2009.10)
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