消費経済レビュー Vol.12 |
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不況下における価格・品質政策 -成否の鍵を握る弾力性
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消費者の節約志向は一層強まっており、店頭における商品の淘汰・選別も激しくなっている。 「価格」はマーケティングの四つの主要機能(製品、価格、流通、プロモーション)のひとつであり、企業の収益に直接的な影響を及ぼす変数である。日本ではこれまで、価格水準をコントロールするマーケティングはあまり行われてこなかったが、不況の進行とともに値下げを行う企業は多くなっている。市場での生き残りと収益確保のための手段として、価格コントロールを含めたマーケティング戦略の巧拙がより一層問われている。 値下げが有効か否かは、自社の値下げの効果と競合他社の値下げの効果との兼ね合いを、消費者の選択行動から見て判断しなければならない。それらの効果を計る有益な指標が弾力性であり、自社の値下げの効果を表現した「需要の価格弾力性」と競合他社の値下げの効果を表現した「需要の交差弾力性」のふたつが、価格変更の有効性を判定する上で特に重要となる。 本稿は野菜ジュースを例に、消費者調査のデータを活用して、弾力性をはじめとして価格変化がもたらすインパクトを計測する方法を紹介し、価格変更が売上にもたらす影響をシミュレーションしたものである。今回試みとして行った方法の最大のメリットは、回答者の負担感の少ない質問紙調査と標準的な計量経済分析手法によって、価格政策の検討・評価に資する結果を導出できる点にある。 弾力性などの指標を手がかりに、価格変更が需要に及ぼすインパクトを総合的に評価した上で、値上げまたは値下げの有効性は容易に判定可能である。価格・品質政策について最適なミックスを見極めるための四つの切り口から、弾力性の数値の大小関係に基づき、価格・品質政策のミックスとして、値下げのオプション四つ、価格維持のオプションふたつ、値上げのオプションが四つの、計10のオプションが考えられる。 消費者調査のデータを用いて弾力性や購入確率関数などを推計し、価格変化がもたらす売上へのインパクトを計測する方法は、回答者への負担感の少ない質問紙調査と標準的な計量経済分析手法で行えることが最大のメリットである。分析者の目的に応じ、自社および競合他社の特定商品間での競合関係をより詳細に分析できるような形に調査内容をカスタマイズできる点も、もうひとつのメリットである。需要者のデモグラフィック属性や購買行動の違いなどに着目したセグメント別の分析が可能である点は、従来のPOSデータを用いた分析では困難なものであり、消費者調査ベースの分析手法の強みでもある。 (2009.10)
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