消費経済レビュー Vol.13 |
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消費者による新政権の政策評価 | |
政権交代の実現により新たに誕生した鳩山内閣は国民からの熱い期待を追い風に船出したが、政権誕生後の失策の積み重ねと時間の浪費のうちに政権発足当初の熱狂はもはや過ぎ去り、逆風にさらされ続ける中で期待感も大きくしぼみつつある。 政権交代の時期を挟んで生じた消費者における政策スタンスの特徴的変化として、「大きい政府」志向への転換、財政健全化重視姿勢の強まり、増税反対から増税許容への転換の三つが確認できる。鳩山内閣の経済政策運営は、「大きい政府」志向と合致し財政健全化重視姿勢への配慮もなされるなど、消費者の政策スタンスの変化に沿ったものとなっているが、消費税増税の先送りはいずれ財政健全化重視姿勢と相容れなくなるのを見越して、消費者が増税許容姿勢を強めている可能性を見落としてはならない。 マニフェストに掲げた政策の多くは、財政による直接的な補助により消費者の需要を刺激するものである。だが、目玉となる子ども手当と配偶者控除・扶養控除廃止にともない予想される、カテゴリー別の支出行動の変化をみると、政策によって消費のプラス効果が発生するカテゴリーは子供の教育費だけであるが、受け取った手当の一部は預貯金に流れてしまい、その他大多数のカテゴリーにとってはこの政策はマイナス効果をもたらすものでしかない。子ども手当と配偶者控除・扶養控除廃止による経済全体の消費刺激効果を試算すると、子ども手当による経済全体での支出増加額は合計で3.85兆円に対し、配偶者控除と扶養控除の廃止による経済全体での支出減少額は、子ども手当の対象家計で-2.43兆円、子ども手当はもらえず配偶者控除・扶養控除廃止の影響のみを受ける家計で-2.35兆円。子ども手当の対象家計では、差し引き1.42兆円が消費支出金額の増加分となるが、子ども手当はもらえず配偶者控除・扶養控除廃止の影響のみを受ける家計による消費支出金額の減少分をふまえると、経済全体でみた消費刺激効果は、差し引き0.93兆円のマイナスになると見込まれる。最も注目されている子ども手当ですら消費刺激効果に乏しく、マニフェストで打ち出されているその他の目玉政策を含め、短期的な消費浮揚を望むことは覚束ない。 鳩山内閣は新成長戦略として環境・エネルギー関連分野、医療・介護・健康関連分野、農林水産分野などを重視する姿勢を打ち出している。消費者自身も、経済成長重視層が多数派である。消費者が描く日本経済の成長イメージをみると、最も重視すべき産業として、鳩山内閣の成長戦略と適合する環境・エネルギー関連産業、医療・介護関連産業、農林水産業の3分野への支持は、従来型の成長産業に類する自動車産業や電機産業など現在の主力輸出産業と半導体や液晶部品などの電子デバイス産業の2分野よりも強いものの、現状ではコンセンサスを得るに至っていない。鳩山内閣の新成長戦略が今後、国民全体のコンセンサスとして定着し実現されていくには、まずは成長戦略のイメージを描ききれず判断を留保している層をターゲットに説得的な成長への道筋を示し、その他の層も含めて成長ビジョンの転換と共有を進めることが必要となろう。 (2010.02)
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