消費経済レビュー Vol.17 |
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Economic Outlook for Japan | |
実質GDP成長率は1年ぶりにプラス成長へ復帰、需要の三本柱である輸出、民間最終消費支出、民間企業設備投資はともにプラス成長を保った。輸出は顕著な伸びをみせたが、水準としては大震災前には戻しきれず、本格回復にはなお遠い。設備投資は大幅な改善が見込まれているが、海外景気の低迷や歴史的な円高の影響等で、2011年度半ば以降失速気味であり、今後も計画がどの程度下方修正されるかが当面の懸念材料だ。大震災のダメージからの回復の過程で、消費財の在庫調整は急速に進んだが、投資財と生産財では在庫が積み上がり調整が立ち遅れている。 2011年に入って以降、エコカー補助金や家電エコポイント、住宅エコポイントなどの政策効果の剥落とその後の予想以上の反動減に加え、大震災がもたらした物理的・心理的ダメージも相まって、消費は大震災前の水準に戻しきれないまま失速・低迷を続け、それが長期化しつつある気配だ。雇用環境は緩やかながらも堅調さを保ち、収入環境についても改善の気配がみえつつあることは、消費にとって数少ない追い風ではあるが、消費の本格回復を実現するにはまだ力強さに欠ける状況だ。腰折れのリスクすら孕んでいる消費マインドの低調ぶりは、消費の先行きをますます不透明なものにしつつある。 弊社の独自調査によると、景気と雇用環境の見通しは大震災直後の最悪期を脱したとはいえ、足許の変化はいずれも悪化傾向にある。他方で、収入状況は実態と見通しともに悪化の兆しはみられない。支出は実態と意向ともに、減少傾向の気配だ。 2012年の日本経済の先行きを占うと、確定要因として、政策効果については2012年に入り震災復興事業が本格的に始まり、2012年度前半は公共投資の下支えもあって、他の波乱要因がなければ景気は失速を回避できる。一時的に低迷していた設備投資も、震災復興事業の本格化を後押しに、堅調な推移を取り戻していく。生産と在庫のダブつきも徐々に解消されていくが、2012年内は生産調整と在庫調整が続く。物価は安定ないしは極めて緩やかながらも上昇の気配を見せていくと目される。 不確定要因となっている「輸出」「雇用・収入環境」「個人消費」について弊社の見解を示すと、輸出は海外景気の低迷や歴史的な円高の長期化により低迷は続いていく。EU諸国の財政危機の余波が他の国々に波及した場合には、輸出の失速は本格化する。雇用・収入環境については、輸出の失速や企業業績の低迷が本格化した場合、雇用・賃金調整の可能性も高まるが、そこまで酷い事態にならなければ雇用・収入環境は堅調さを保っていく。消費については、消費マインドの低迷が続くとともに、大型耐久財を中心に需要の低迷は長引く可能性が高く、2012年内いっぱいは消費低迷が続く。 2012年の日本経済の先行きに対する弊社の総合的な判断は、輸出は低迷し、雇用・収入環境は堅調さを保つものの、個人消費は低迷状況に陥る「内外需低迷シナリオ」を採用したい。次善のシナリオとしては、輸出の失速が本格化し、雇用・収入環境は悪化、個人消費も低迷・失速していく「内外需失速不況本格化シナリオ」と、輸出は堅調な推移をみせ、雇用・収入環境も堅調さを保つが、消費マインドの悪化が尾を引き個人消費の低迷が続く「外需堅調消費低迷シナリオ」のふたつを挙げておきたい。 (2012.01)
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