消費経済レビュー Vol.18 |
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Economic Outlook for Japan -景気の回復にもたつく中で持ちこたえる消費 |
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実質GDP成長率は再び、マイナス成長に落ち込んだ。民間最終消費支出と民間企業設備投資は堅調だが、輸出の落ち込みと在庫調整が、景気のブレーキとなっている。輸出動向をみると、米国向け輸出の回復は数少ないプラス材料だが、中国経済のスローダウンとEU経済の混乱・低迷が、日本の景気の先行きに影を落とす。設備投資は堅調な回復が期待されるが、伸びの鈍化傾向は気がかりな材料だ。消費財の在庫調整が急速に進むも、投資財と生産財では在庫の積み上がりが更に続いており、在庫・生産調整の足取りはなお重い。 消費は水面下での低迷を続けており、特に選択的支出でのスランプの長期化が消費の足を引っ張っているが、他方で基礎的支出は最近持ち直しの気配が見える。供給サイドからは、小売販売が震災前の水準にようやく回復するなど、明るい材料が出始めている。雇用環境や収入環境の堅調ぶりや、消費マインドの改善傾向も、消費の下支えに寄与している。 日本経済に関するシンクタンク各機関の、2012年度から2013年度にかけてのシナリオを総合すると、両年度とも、内外需ともに減速し景気の低迷が本格化していくシナリオが有力だが、対抗馬としてはそれと概ね対極にある、外需と設備投資を牽引役に景気が本格回復への道を歩んでいくシナリオが考えられる。 弊社の独自調査によると、景気と雇用環境の見通しの悪化傾向は続いている。収入状況は改善傾向にあるが、収入見通しは悪化傾向にある。支出状況は増加の方向にあるが、支出の減少意向は強まりつつある。 2012年度の日本経済の先行きを占うと、確定要因として、政策効果については、震災復興事業による公共投資の増加や、エコカー補助金、住宅エコポイントの復活等が景気の下支え要因となる。設備投資は、震災復興事業の本格化を後押しに、堅調な推移を取り戻す。物価上昇率はマイナスながらも、ゼロ近傍で推移する。輸出失速や企業業績低迷のリスクは孕みつつも、米国経済を中心に海外の景況感改善や為替の円安傾向、株価の回復傾向などを材料に企業マインドの悪化は回避でき、雇用と収入も堅調な推移を保つと目される。 不確定要因となっている「輸出」「在庫・生産調整」「個人消費」について弊社の見解を示すと、輸出は、欧州経済の混乱と中国経済のスローダウンで海外景気の低調は続き、為替の円安修正も限られ、2012年度以降も低迷は続く。EU諸国が財政危機の打開にもたつけば、輸出失速は本格化する恐れもある。在庫・生産調整については、震災復興事業やエコカー補助金・エコポイント等の政策の波及効果は弱く、生産と在庫のダブつきは2012年中も続き調整も長引く。消費については、震災復興特需や政策効果による景気下支えや消費マインドの回復等で、2012年度を通じ健闘を見せそうだが、本格復調には遠い。 2012年度の日本経済の先行きに対する弊社の総合的な判断は、輸出は低迷し、在庫・生産調整は停滞するものの、個人消費は堅調さを保つ「外需低迷消費頼みシナリオ」を採用したい。次善のシナリオとしては、輸出の失速が本格化し、在庫・生産調整も停滞しつづけ、個人消費も失速していく「内外需失速不況本格化シナリオ」と、輸出が回復して堅調な推移をみせ、在庫・生産調整は停滞するものの、個人消費は堅調さを保つ「内外需安定推移シナリオ」のふたつを挙げておきたい。 (2012.04)
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