消費経済レビュー Vol.19 |
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Economic Outlook for Japan -内需主導の回復も先行き下方リスクを孕む景気と消費 |
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実質GDP成長率は再びプラス成長に復帰し、民間最終消費支出を牽引役に内需の好調ぶりが際立つなど、景気は堅調な推移が認められる。直近の輸出は、中国向け輸出とEU向け輸出の落ち込みが目立つ。中国景気の減速の鮮明化に加え、米国景気も方向感が定まらないなど、外需の動向には先行き不透明感がつきまとう。設備投資は回復の動きを続けるが、その勢いは鈍化気味であり、業種ごとの好不調もまだら模様だ。消費財では在庫調整が急速に進む一方で、投資財では在庫の積み上がりが目立つ。震災復興特需や政策効果の息切れ後には在庫調整の進行は必至だが、消費税増税をにらんだ駆け込み需要とその後の反動減が在庫・生産調整のペースを狂わす要素となる。 消費は2012年に入りプラスに転じ、これまでスランプが長期化していた選択的支出で、好調ぶりが目立つ。小売販売は2012年に入ってから震災前の2011年2月を超える水準での推移を続けており、特にコンビニエンスストアの成長ペースは平均して高めでの推移となっている。雇用環境と収入環境は比較的堅調に推移しているが、持続的回復にまでは至っていない。消費マインドの改善傾向も続き、大震災前の2011年2月の水準を上回る状況となっている。ただし2012年夏のボーナスのマイナスは、収入環境と消費マインドの両面で、消費にとっては悪材料だ。 日本経済に関するシンクタンク各機関の、2012年度から2013年度にかけてのシナリオを総合すると、2012年度は消費を中心に内需主導で回復するが、2013年度以降は牽引役を何に託すかにより景気の先行きに対するシナリオも各機関で各様だ。 弊社の独自調査によると、景気と雇用環境の見通しは顕著な改善が認められる。収入状況と収入見通しのいずれも、相対的に改善傾向にある。支出状況は不変・現状維持が大勢だが、相対的には増勢傾向にあるとともに、支出の減少意向も弱まりつつある。 2012年度の日本経済の先行きを占うと、確定要因として、政策効果については、エコカー補助金や住宅エコポイントなどの予算切れ後に需要の反動減の可能性はあるものの、2012年度内は、予算切れ前までに積み上げた需要の恩恵もありプラス成長は保てる。設備投資は、震災復興事業の本格化を後押しに、堅調な推移を続ける。物価上昇率は、ゼロ近傍ながらもプラスでの推移を続ける。在庫・生産調整に関しては、生産と在庫のダブつきが2012年内では解消されないとみる。不確定要因となっている「輸出」「雇用・収入環境」「個人消費」について弊社の見解を示すと、輸出は、中国を始めとする海外景気の低迷や歴史的な円高の長期化により、低迷が続いていく。EU諸国が財政危機の打開にもたつき、その余波がBRICsやアジア新興国に波及すれば、輸出失速は本格化する恐れもある。雇用・収入環境については、堅調な推移を保つと見込まれる。消費については、政策効果等がプラスに作用し、2012年度は堅調に推移すると期待される。消費マインドには回復の気配がみられるが、本格復調にはなお遠いであろう。 2012年の日本経済の先行きに対する弊社の総合的な判断は、輸出は低迷するが、雇用・収入環境は良好さを保ち、個人消費も堅調な推移を続けるとする「内需堅調外需低迷シナリオ」を採用したい。次善のシナリオとしては、「外需低迷消費頼みシナリオ」と「内外需拡大景気本格回復シナリオ」のふたつを挙げておきたい。 (2012.08)
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