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消費経済レビュー Vol.19
顔面温度の感情測定指標としての有効性の検証

 消費者の意思決定プロセスは、従来のマーケティングリサーチ手法においては、質問紙調査やインタビュー調査などによる、認識可能な言葉で表現できる情報でしか捉えられていない。一方、感情の動きなど無意識下の決定プロセスについて人は語ることができない。こうした無意識下の決定プロセスに迫るべく、生理指標を用いて脳活動を測定するニューロマーケティングが注目されている。従来、fMRI(核磁気共鳴計測)などの測定装置が使用されるが、これらの測定方法は対象者への負担が大きいことが課題として挙げられている。
 そこで本研究では、対象者への負担が軽い測定方法としてサーモグラフィーカメラによって測定できる顔面温度を用いて、消費者の商品の購入決定プロセスと顔面温度の関係について検討した。
 実験1では、購入意向と顔面温度の関連性を検討した。商品には、実物の菓子とスマートフォンを用いた。その結果、購入意向と顔面温度に関連性が確認できた。加えて、購入の意思決定に至らなくても商品に対して何らかの感情が喚起されたときに、顔面温度が上昇する傾向がみられた。また、顔面温度の変化パターンにより、判断過程が直感的なものか、時間をかけて冷静に判断されたものであるかを捉えることができた。
 実験1では、「買いたい」や「欲しい」といった感情以外に、少数ではあるが「嫌い」な感情でも顔面温度が上昇する場合もみられた。そこで実験2では、顔面温度と感情の関連性を検討した。感情を測定するため顔面温度の他に心拍数を用い、これらふたつの指標の組み合わせによって感情の特定を試みた。対象者には感情を喚起する6種類の映像刺激を提示し、感情による顔面温度の差を分析した。
 その結果、顔面温度と感情には関連性があることが確認された。さらに、顔面温度と心拍数の組み合わせによって、「楽しい、悲しい」感情と、「嫌悪、恐怖」感情を区別することができた。
 実験1、2を通して、顔面温度の変化には感情が喚起されたかどうかが関連している可能性が高いことが示された。何らかの感情が喚起されたときに顔面温度が上昇しており、特にポジティブな感情で顔面温度が上昇する確率が高い傾向がある。これより、顔面温度が感情を測定する新しいリサーチ手法としてひとつの指標となりうる可能性が得られた。
(2012.08)


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