消費経済レビュー Vol.20 |
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Economic Outlook for Japan-揺らぐ景気と消費 | |
実質GDP成長率はマイナス成長に転じ、輸出、民間企業設備投資、民間最終消費支出という需要の三本柱がマイナスとなるなど、景気の失速は鮮明だ。輸出は、中国向けとEU向けで不振が続き、米国向けもピークアウトしつつある。中国、米国、EUのいずれも、経済政策運営上の課題を抱え、外需の先行きは不透明なままだ。設備投資は勢いが鈍化し、製造業で落ち込みが際立つ。生産財では在庫調整の動きが進み、消費財と投資財でも調整局面入りが濃厚だ。景気の失速が進めば、今後の投資計画は下方修正され、在庫・生産調整にも拍車がかかる。 消費支出は2012年の半ば以降、勢いの鈍化が鮮明だ。小売販売は2012年2月をピークに、一進一退しながら下落の傾向にあり、販売面からも景気の失速が表面化している。これまで比較的堅調な推移を保ってきた雇用・収入環境にも、悪化の兆しが見え始めている。消費マインドにもピークアウトの兆候がうかがわれ、直近では悪化が加速している。 日本経済に関するシンクタンク各機関の、2012年度から2014年度にかけてのシナリオを総合すると、2012年度は輸出と設備投資の不振で景気は失速するが、2013年度は輸出と設備投資の反転で景気は回復していく。2014年度は外需依存の回復となるが、個人消費のスランプが大きく響けば景気は再び低迷・失速の可能性を孕む。 弊社の独自調査によると、景気と雇用環境の見通しは目下、方向感は定まっていない。収入状況と収入見通しのいずれも、悪化へ転じる動きが認められる。支出状況は不変・現状維持が大勢だが、実態面では増勢傾向にある反面、減少意向が強まりつつある。 2013年の日本経済の先行きを占うと、確定要因として、震災復興特需や政策効果がはげ落ち、需要の反動減が鮮明となる。設備投資は2013年に入ってからも低迷が続く。2013年半ばにかけて在庫調整や生産調整が進行する可能性が濃厚だ。物価上昇率はゼロ近傍のマイナスに低迷する。不確定要因となっている「輸出」「雇用・収入環境」「個人消費」について弊社の見解を示すと、輸出については、中国で景気の失速が鮮明化し、輸出の低迷は続く。米国と欧州で景気低迷が顕在化すれば、輸出低迷も長引く可能性が高い。雇用・収入環境については、在庫調整や生産調整が進行し、残業代等の賃金の低下や非正規層での雇用調整が具体化する。低迷が長期化すれば、正規層も含めた給与の引き下げや雇用調整の動きが本格化する恐れもある。消費については、大型耐久財を中心に需要の反動減が顕在化し、消費マインドの悪化も更に進む。消費税増税前の駆け込み需要の盛り上がりは限定的で、増税前から生活防衛に走る動きも一部ではみられ、消費の低迷は暫く続きそうだ。 2013年の日本経済の先行きに対する弊社の総合的な判断は、輸出は失速し、雇用・収入環境も悪化、個人消費も低迷を続ける「内外需失速景気底割れシナリオ」を採用したい。次善のシナリオとしては、「内外需低迷景気踊り場シナリオ」と「内需低迷外需頼みシナリオ」のふたつを挙げておきたい。シナリオを大きく狂わす要因として、主要国での新たなリーダーの選出・交代が各国の政治や外交、経済政策等の運営に与える影響、中でも、2012年12月の総選挙後の日本の政治、外交、経済政策等の運営の変化には、特に注意したい。国内外の政治動向や政策対応次第では、2013年入り後の日本経済が、総悲観から総楽観の状況へと転換するか否かの節目に直面している。 (2013.01)
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