消費経済レビュー Vol.23 |
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消費税増税後の消費を読む | |
消費は息の長い回復を続け、支出意欲も堅調さを保っている。年明け以降、景気の先行きを不安視する気配が広がりつつあるが、支出意欲に悪影響を及ぼす懸念材料は見当たらない。消費税増税に伴う景気悪化で一時的に収入が落ち込んでも、消費への悪影響は限定的である。特に1990年代以降は、消費に対する所得の影響力は格段に落ちている。 足許では、層の違いを越えて、低価格志向並びに価格重視姿勢へのシフトが強まっている。こうした「トレーディング・ダウン」の動きは、実質的な生活レベルに特段の変化がみられない中で、短期間で急激に強まったものであり、むしろ一時的な政策不信を引き金とした短期的な現象にすぎない。よって、政治状況が落ち着くにつれて、徐々に終息していくものと期待される。 政策への期待感がどの程度まで回復し、消費税増税に伴う需要下押し圧力にどこまで抗し切れるかが、今後の消費に対する楽観ないし悲観シナリオの分かれ目となる。シナリオの行方を左右するのが、日本経済の先行きに対する消費者のマインドの強弱である。消費税増税後に実施される諸政策が消費者のマインドにどのようなインパクトを与えるのか、その成否の見極めが重要となる。今後は、成長戦略などの政策への期待感の違いにより、消費のリード層とボトルネック層とに分かれていき、いずれが優勢を占めるかのせめぎ合いが続くこととなりそうだ。 政策への期待感の違いは、支出意欲の高低だけでなく、品質価格重視度の違いにも色濃く現れ、購入単価の違いなどにも如実に反映される。品質価格重視度は消費者のセグメンテーションに有効な指標となりえるが、その違いが個人レベルで事前に判別できるとは限らない。そこで、個人レベルでも客観的に把握でき、品質価格重視度の違いを巧く捉えられる有力な代理指標として、収入水準の活用が有効である。収入階層によって購入されている財の品質格差が鮮明であり、品質格差が購入単価の違いに反映されやすい状況では、収入水準を活用したセグメンテーションはより一層やり易くなる。 品質価格重視度、あるいは、その有力な代理指標である収入水準の違いに基づき、消費者のセグメンテーションを有効に行えるならば、品質価格重視度の違いを考慮した巧みな商品設計の差別化により、各人の選好の違いが自発的に表現される形に商品選択を誘導できる。この仕組みは、経済学では自己選別のメカニズムと呼ばれている。選好の違いに応じて複数の商品が市場に併存できる状況は、品質価格重視度の違いをテコとした自己選抜のメカニズムによる差別化が成功し、「分離均衡」が成立した場合といえる。品質価格重視度の違いを活かした差別化は、企業にも大きなメリットをもたらす。自己選抜による「分離均衡」が成立する形で、品質の優劣をつけながら複数の商品を併存させることが可能な場合には、複数商品間の価格設定を工夫することで、単一価格設定時よりも高い売上金額を得られる。 消費税増税後に、政策への期待感により楽観シナリオに与する消費リード層と悲観シナリオに与するボトルネック層とに分かれていく状況に対し、品質価格重視度の違いを活かした差別化を行うことで、両者の選好の違いを巧みに利用してそれぞれに満足のいく商品を提供しつつ、企業も自らの収益機会を可能な限り高めることが可能となる。その意味で、品質価格重視度の違いを活かした差別化は、シナリオの成否に極力左右されない形で、消費税増税の悪影響を巧みに乗り越えていく、有効な手だてとなりうるだろう。 (2014.03)
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