消費経済レビュー Vol.23 |
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なぜ教育投資は増え続けているのか | |
-教育支出を支える「子どもの将来への不安」と親心 | |
一部の層で節約姿勢の強まりがみられる中でも、教育費への支出意欲は、なかなか衰えをみせない。大学入学前の子どもがいる人の約6割は、教育関連サービスへの支出を行っている。子どもが小学生ぐらいの頃は子どもの才能を伸ばすことを意識した教育支出に前向きだが、中学生以上になると高校受験や大学受験などの受験対策の方に教育支出の力点がシフトしていく。教育費や教育関連サービスへの支出水準は、50代以上や高収入層、高校生の子どもを抱えている層などで、高くなっている。また、子どもの人数が少ない層では、教育支出により積極的な姿勢がうかがわれる。 親が教育支出に積極的になる理由として着目したいのが、「子どもの将来への不安」と「子どもにとって最も望ましいと思う進路の選択理由」のふたつである。子どもが小さいうちは、学校などでの集団生活にかかわるトラブルや子どものココロの悩みなどが不安の中心となっているが、子どもが長じるにつれて、子どもの進路に関わる悩みへと不安の中心は移り、更には就職の失敗や生活レベルの低下など、子どもの将来の境遇に関わることにまで、不安の中身は広がっていく。教育費や教育サービス支出の水準が高い層では、親として「子どもがまっとうな職につけるかどうか」が将来への不安として切実である。子どもにとって最も望ましいと思う進路の選択理由としては、子どもに将来望ましい職業や就職先につかせたい、将来のため子どもにはできるだけ良い教育を受けさせたい、子どもにはできるだけ高い学歴をつけさせたい、といった実利的動機が上位に挙がり、教育費や教育サービス支出の水準が高い層ではその傾向が強い。子どもの将来への不安の強さや、子どもの自立や無事な将来を願う親心などが、教育費や教育関連サービスへの支出などの上昇につながっている。ただ、子どもの将来を心配する親心が高学歴志向へ収斂すると、高学歴というシグナル獲得のための教育投資に走りやすくなり、加えて、親どうしが更なる教育支出増加に煽られることで、事後的に見れば過剰な教育投資をしてしまうこととなるだろう。これら諸要因の相乗効果で、教育支出に対する積極姿勢が現れていると推測される。 「子どもを大学にまで入れさえすれば、卒業後にまっとうな職には就け、人並みの生活は送らせてやれる」といったハナシは、今となっては過去の幻想にすぎない。現在、子育て・子手離れ期にある親たちは、バブル崩壊後の「失われた20年」の下で、(新卒採用も含めた)雇用環境の厳しさを目の当たりにしてきた分、子どもの将来に対しては、(自分自身の体験以上に)シビアな見方をしている。子どもの将来に対する親としての危機意識こそが、教育支出に対する積極姿勢の背後にある根強い動機といえる。 2014年4月からの消費税増税を控え、ミドルにあたる世代、管理職・経営者や専業主婦、低収入層などでは既に、節約姿勢の強まりがみられつつある(Economic Outlook for Japan Page.36 ; 図表Ⅰ-35参照)。しかしながら、生活防衛を意識して消費者が支出抑制姿勢を強める中でも、支出がなかなか減らない、或いは、支出を減らそうとしない傾向にあるものの代表例が、教育支出である。 弊社ネットモニターを対象に行った調査結果によると、2014年1月の調査では、「1年前と比べ支出が増加した項目」並びに「今後支出を増やしたい項目」のいずれでも、「子供の教育費」は上位3位以内に入っている。2014年1月の調査での比率の増減差(増えた‐減った/増やしたい‐減らしたい)をみると、「子供の教育費」は第2位を占める。「1年前と比べ支出が増加した項目」並びに「今後支出を増やしたい項目」について、2013年7月の調査から2014年1月の調査にかけての比率の変化をみても、「子供の教育費」は上位3位以内に入っている(Economic Outlook for Japan Page.30 ; 図表Ⅰ-30、Page.34 ; 図表Ⅰ-33参照)。これらの結果からは、消費者の間での、教育費への支出意欲の高さがうかがわれる。 本稿では、教育関連サービスや教育費への支出状況を示すとともに、教育支出に対する積極姿勢の背後にある動機を明らかにしていく。 (2014.03)
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