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消費経済レビュー Vol.27
2016年度の消費の展望 -冴えないマクロ経済動向に
引きずられ消費の低迷は続く【要旨】

 2014年4月の消費税増税後、消費回復の動きは力強さに欠いたまま、2015年8月を境に消費支出は再び悪化に転じた。消費支出の伸びはその後もマイナスが続くなど、消費の落ち込みは足許で鮮明化している。弊社の独自調査では、世帯支出の減少意向は、支出の中身の違いによらず、確認できる。この先、支出全般だけでなく、カテゴリーレベルで見ても、消費の低迷が続く可能性は高い。
 消費を動かす要因に着目すると、雇用と収入に関しては前向きな動きがみられ、物価上昇率も低下の動きが続いている。だがこれらは、消費の回復にはつながっていない。むしろ、景気見通しの悪化が、現状の消費低迷の主たる要因となっているようだ。
 マクロ経済動向をふりかえると、民間企業設備投資は堅調だが、民間最終消費支出と輸出は低迷している。消費は当分の間、スランプを引きずりそうである。設備投資は今後も回復基調での推移が期待されるが、輸出は暫くは冴えない動きが続くと見込まれる。在庫循環のプロセスは停滞気味で、投資財を中心に在庫の積み上がりが顕在化している。過剰在庫の処理が長引けば、景気の低迷も長期化するおそれがある。
 日本経済に関するシンクタンク各機関のシナリオを総合すると、2016年度は、設備投資や消費などの内需を中心に、景気は堅調な回復をみせていくシナリオが多数派だが、2017年度は、内需を中心に景気は低迷・失速していくシナリオが多数派である。2016年度から2017年度にかけての景気の行方は、内需の動向に大きく振り回されそうだ。
 弊社の調査結果を基に今後の消費動向を評価すると、消費をとりまく環境は明らかに悪化しており、支出意向の悪さとともに、景気見通しの悪さが際立っている。景気見通しの悪さは男性の若い世代で顕著だが、今後、悪化方向への変化が更に進めば、残りの世代にまで悪化の影響が拡がっていくおそれがある。
 2016年度の日本経済の先行きを占うと、確定要因として、2017年4月からの消費税再増税は(特別な法的措置が無い限り)実施の予定である。日銀は、超過準備預金へのマイナス金利の付加を決定したが、その後、追加の政策措置はみられない。在庫調整と生産調整に関しては、投資財で在庫の積み上がりが続き、在庫並びに生産の調整にもたつきがみられる。物価上昇率はかろうじてプラスを保っているが、インフレ目標2%の達成は棚上げとなりそうだ。外需については、米国景気は回復の足取りがややスローダウン気味である。EU景気は、独仏などの主要国で、短期的な調整局面に入りつつある。中国景気の失速は鮮明となっている。外需はしばし、低迷が続くと見込まれる。
 不確定要因も考慮に入れた、日本経済の先行きに対する弊社の総合的な判断は、設備投資は堅調に推移し、雇用・収入環境の良好さを保つものの、個人消費は回復にもたつき暫し鈍化・低迷する「投資堅調消費低迷シナリオ」である。まず、設備投資については、製造業を中心に大企業主導で堅調な回復が続く。雇用環境は堅調さを保ち、企業業績の改善などを後押しに収入改善の動きも続く。ただし、2016年夏期ボーナスの伸び率はプラスながらも、昨年を下回るおそれもある。個人消費については、資産市場の混乱を引き金に、景気見通しが悪化し、支出意欲は減退している。再増税の時期が近付くにつれ、その悪影響は消費者の節約姿勢を強め、支出を抑制させるおそれがある。足許の景況感が悪い分、駆け込み需要の山は小さい一方、増税後の反動減の谷は深くなる可能性が高いだろう。


(2016.04)

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