為替相場は1ドル100円の壁を突破し、株価は年初来高値を更新し続けるなど、安倍内閣の下で急速に進んだ円安・株高の流れは、その勢いに拍車がかかっています。アベノミクスへの期待感は高まっていますが、大胆な金融政策や機動的な財政政策の効果が実体経済に現れてくるのはまだ先です。成長戦略の中身は固まっておらず、マーケットの期待通りの結果となるかもなお未知数です。 公表されている経済指標を見ると、景気の失速には歯止めがかかったものの、海外の実体経済も弱含みで推移する中で、外需の先行きには不透明感がつきまといます。企業マインドには改善が認められますが、投資判断での慎重姿勢は依然崩しておらず、設備投資は先行き抑制気味です。在庫調整には進展がみられますが、生産の回復の鈍さからその足取りは重いようです。 今後の日本経済の見通しとして、2013年度は景気の鈍化傾向が続き、2014年度は個人消費を中心に内需がスランプに陥り外需への依存を深める、といったシナリオが主流です。アベノミクスの当初の目論見通りに、今夏に向けて、外需と個人消費が回復していくかどうかで、景気の先行きは分かれそうです。 回復の勢いと裾野の広がりの両面で、消費にもようやく明るい材料が出始めてはいますが、その中身は依然として、マインド主導・資産効果頼みの域を出てはおりません。収入の先行きにも明るい材料が出てきてはいますが、雇用環境と収入環境のいずれも、改善への動きに立ち遅れが目立っております。収入環境が冴えない中で、足許での消費の動きは、消費者自身の貯蓄の取り崩しで支えられているのが実情です。マインドと支出余力がともに限界を迎える前に、消費者の可処分所得が回復しなければ、これまで続いてきた消費回復の動きも息切れし、景気の腰折れ・失速も顕在化する恐れも皆無ではありません。 今号の概要は以下のとおりです。 「Economic Outlook for Japan-マインド主導で反転回復する景気と消費」では、前号が発刊された2013年1月以降の経済情勢を整理し、消費マインドの急回復と株価上昇による資産効果などを追い風に回復の動きをみせる日本経済の見通しと、今後の消費の読み方を提示します。 「アベノミクス下での消費の行方-動き出す潜在購買力」では、弊社による独自調査の結果をもとに、消費者のマインドと支出意欲の観点からアベノミクスがもたらしているインパクトを評価するとともに、今後の消費の行方を左右する要因として、現状の支出規模並びに支出につながる潜在購買力としての金融資産規模に着目しつつ、その両面で圧倒的存在感を示すミドルとシニアの富裕層の消費行動に焦点をあてた分析・考察を行います。 2013年初夏、日本経済の底流で生起しつつある変化の予兆を捉えて、一歩先を見据えた戦略的判断と行動の一助となることを企図して、「消費経済レビュー」第21号を実務家のみなさまにお届けいたします。 (2013.06)
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