-100円がつくりだす楽しさと驚き
「100円ショップダイソー」をご存じだろうか。買うつもりもなく店に入り、気がついたらかごの中には商品があふれていた、そんな経験をした方も多いのではないだろうか。展開するのは(株)大創産業(代表取締役:矢野博丈氏、以下大創)、1998年は毎月30~40店ペース(なんと毎日出店)で新規出店、9月には1,000店を突破し、1999年3月期の売上高は前期比65%増の800億円の実績をあげている。
消費不況下のいま、低価格で成功している企業、商品は多いが、大創の成功は決して生活節約・防衛型の商品を提供したからではない。100円均一の世界の中で、あれもあるこれもあるという楽しさと、これが100円!?という驚きを提供することで、夢や楽しさを売る店、宝探し感覚で楽しめる店を実現しているからだ。それを支える商品力、売り場づくりを中心にその人気の理由を紹介したい。

創業は1972年、決して当初から順調だったわけではない。小型トラックに雑貨を詰め込んでスーパーの店頭など人の集まる場所で店開きをする移動販売を開始し、しばらくして、広島の地盤を任される形で100円均一の商売に関わることとなる。その後、本格的に100円均一商品の移動販売を始めた1977年に社名を「大創産業」に変更している。
キャラバン隊による移動販売は業容を拡大し、車に台数も増え、エリアも拡大していく。1987年、ユニー江南店からの出店要請を受け、店舗展開の第一号店を出店するが、キャラバン隊による移動販売から店舗展開へと政策転換するまでには数年を要する。店をつくれば設備投資はもちろん、移動販売とは比較にならない在庫を持つ必要があり、資金の回転が低くリスクが大きいため、容易には踏み切れないのも当然である。
本格的な店舗展開を目指して直営店がオープンしたのは1991年だが、この間常設店はわずかに2店、100台近いキャラバン隊がビジネスの中心であり、売上は50億円に達していた。1992年には店舗売り上げが移動販売の売上を超え、1995年には店舗販売100%となっている。
スタート当時人気があった100円ショップも、「安かろう悪かろう」の商品が多かったため、客から飽きられ、同業者は次々に廃業していった。そんな中で大創が成長してきた背景には、商売に対する考え方、生き方の転換がある。
それまでの業界常識では、100円で売る商品の仕入れ原価の上限は70円であり、70円以下で仕入れられないものは100円では売れないとされていた。それでは客にとって魅力のある品揃えは難しいという考えから、仕入れ原価70円の上限を撤廃したのである。原価積み上げ方式による商売から、お客様にとっての価値から考えた商品の仕入れと品揃えをベースとする商売への転換である。
お客様が「これが100円なの」と驚くような商品を提供するようになって売上も急上昇、広島県下から全国へとその評判が広まり、キャラバン隊の車台数がどんどん増えていった時期でもある。商品の扱い量も大きくなるが、なんと言っても量が売れて成り立つ商売であり、当初7年間、売上35億円までは赤字が続いたという。
業界の業績と戦略を比較分析する
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