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公開日:1999年01月01日

株式会社すかいらーく&イズミ農園
-"外食産業"と"農業法人"の有機ビジネス二人三脚
戦略分析チーム 川口

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 資本力のある食品産業が農地を取り込んでいく一方で、農業生産者の会社である「農業法人」が力をつけてきている。近年では、国内農家平均の数百倍の経営規模を誇り、ほぼ中堅食品メーカー並の販売規模に至るまで成長した農業法人も出てきている。有力な外食産業や食品メーカーと組むことで経営ノウハウを導入し、成長の原動力としているのである。その成功モデルのひとつが、外食最大手企業である「すかいらーくグループ」と山梨県北巨摩郡大泉村という小村で脱サラから始まった「有限会社イズミ農園」の共同事業である。


1.外食産業の有機の先鞭をつける -すかいらーくの有機野菜導入と挫折

 「モスバーガー」「KFC」「デニーズ」といった大手外食チェーン。さらには、「すずめのおやど」「大庄グループ」「ワタミフードサービス」といった居酒屋チェーンまで、ここ数年数多くの外食関連企業が競うようにして料理メニューに使う食材の有機化を進めている。「CASA」や「藩」を展開する西洋フードシステムズに至っては「見えないところのうまみにもこだわる」として1995年にしょうゆやソースなどの調味料から有機化を始め、1996年からはサラダ用の主要野菜を有機野菜に切り替え、現在では米までもすべて有機栽培米という徹底ぶりである。

 こうした外食産業における有機競争の中でもいち早く有機メニューの採用に踏み切ったのは、すかいらーくグループで、1985年のことである。まず「生で食べられるホウレン草」をサラダ用に仕入れ始め、1993年にグループ内の「ジョナサン」全店でこの「有機野菜のホウレン草サラダ」を定番メニュー化している。以前取り上げたモスバーガーでもミネラル野菜の実験導入が1995年、全店導入が1997年であるから、その取り組みの早さは際だっている。

 ただし、1993年は記録的な冷害に見舞われ不作となり、この新メニューはわずか2週間で中断せざる得ない状況となった。この苦境を共に乗り越え、再開までこぎつけるパートナーとして貢献したのが「有限会社イズミ農園」である。


2.信念の有機野菜ビジネス -脱サラ農業法人「有限会社イズミ農園」

 「農業をやれば毎日、山が見られる」。1981年、建設会社を脱サラした梅津鐵市氏が八ヶ岳連峰を望む山梨県北巨摩郡大泉村に開園したわずか30アールの農地が現在年商50億円を超える「株式会社いずみ」のスタートである。梅津氏自身は"農業のズブの素人"であったが、スタート当初から「生産の先には販売が不可欠である」という信念を持ち、高付加価値を求める市場に向け、収益性、安定性、効率性を確約できる「生産・加工・販売の一貫体制」を目指して事業化に取り組んだ。

 また実際、梅津氏は技術開発にも意欲を持ち、おいしくて安全な野菜作りのために「土、水、光(太陽)」の3大要素についての研究と実験に精力的に取り組んできた。化学肥料を頭から否定することなく、古典的な農法と現代化学農法を融合させるなど試行錯誤を繰り返し、最適な農法を追求し続けている。全国各地の農地を技術指導で訪問している梅津氏であるが、畑によって土壌や水の状態、肥料の与え方、陽の当たり方、さらには農家の考え方までそれぞれの条件が異なり、状況に応じて最適な農法を指導している。つまり「イズミ農法」は畑の数、農家の数だけ存在するのである。

 こうして事業規模が拡大する中、1989年には「有限会社イズミ農園」として法人化されるに至った。現在では、1,200アールの実験農場を稼働させながら、全国各地の契約農家に有機栽培方法や土壌改善の技術指導に出向き、これらの農家から買い取った野菜をカッティング加工し、外食産業や中小スーパーに卸販売している。契約農家は北海道から沖縄まで300軒、技術指導を受ける農家は1,000軒に及ぶ。


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「大手外食企業と脱サラ農家のパートナーシップ -共同出資会社「いずみ」」

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