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公開日:1999年01月01日

ソニー株式会社
-ソニー「バイオノート505」の商品開発戦略
戦略分析チーム 合田

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 97年度ソニーは売上高、営業利益ともに二桁台の伸長を果たし、過去最高の実績を上げた。

 
 97年度実績前年比
・売上高   24,064億円 110.9%
・営業利益1,013億円123.8%*単独決算
 伸長の要因は「バイオ」「スタミナハンディカム」「MD」「WEGA」のヒットだ。今年度後半は大規模な投資の反動として372億円の営業赤字が見込まれているが、これらの商品は依然好調である。中でもパソコンの「バイオ」はウィンドウズ95以降需要を押し上げる好材料のなかったパソコン市場で好業績を上げた。ここでは、発売と同時に各方面で話題になった「バイオノート505」(B5サイズのパソコン)に焦点をあて、成功の要因をみてみたい。


1.「バイオノート505」のインパクト

 ソニーの「バイオ」は初め「ミニタワー」と呼ばれるデスクトップ型として米国で先行発売された(96年9月)。翌97年7月には日本でデスクトップ型、A4ノート型が発売され、「バイオノート505」(以下505)は97年11月に発売された。

 ソニーでは販売実績を一切公表していないが、

  • 97年12月、1機種当たり販売台数が過去最高を記録。7%の数量シェアを獲得。
    (亜土電子工業T・ZOME事業本部長 日経ビジネス98.3.9)
  • 98年4-6月期、3電気街(東京:秋葉原、大阪:日本橋、名古屋:大須)において10%の数量シェアを獲得。(マルチメディア総合研究所98.8.24)

など好調さが伺える。

 その仕様は、

  • 重さ1.35kg
  • 厚さ23.9mm(当時B5型で世界最薄)
  • 「マグネシウム合金」と「紫色」の筐体の採用
  • 静止画管理・検索ソフトの内蔵

というもので、当時「黒」を基調にスペック重視の製品展開(クロック周波数やハードディスク容量の競争)が主流だったノートパソコン市場に「デザイン」と「実用性」のバランスによる新たな選択軸を提示し、パソコン初心者、女性など新たなユーザーを獲得した。


2.パソコン事業再参入の狙い

 ソニーのパソコンはこれが初めてではない。かつて「SMCシリーズ」、「MSXシリーズ」(ゲームに特化したMSX規格対応パソコン)による参入を図ったものの、89年、91年にそれぞれ撤退し、家庭用パソコン事業では失敗してきた。

 にもかかわわらず、ソニーはなぜパソコンに拘ったのか。バイオの開発にデザイナーとして企画当初から参加し、基本コンセプトなどの立案に関与した後藤主席は次のように答えている。

「96年4月、出井さんが『デジタルドリームキッズ』のコンセプトを掲げて、IT(インフォメーションテクノロジー)カンパニーをつくった。さしあたって基幹となるパソコンを早期に開発しなければならない、ということになり、どうせやるなら将来的には理想的なパソコンをつくろうという話になった。」
「このころから既に『既存AVハードをつなぐ有機体』としてのソニー版パソコンの基本的な考え方は共有されていた。」

出井社長の強い思い入れがあったことが伺える。


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「「バイオ」の開発プロセスと体制」

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