半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:1999年01月01日

トヨタ自動車株式会社
新顧客アクセス開発による流通改革への挑戦
戦略分析チーム 山田

全文の閲覧には有料の会員登録が必要です。
登録済みの方はこちらからログインして全文をご利用ください。

業績の低迷から回復へ

 国内の新車登録台数は97年の4月以来、前年同月を割り続け98年は前年度比84.8%、434万台に終わった。99年も低迷を続け1月から5月の累計でも前年対比90.3%と厳しい状況となっている。

 一方、トヨタの国内販売台数(以下全て単体実績)は97年193万が98年は169万台(前年度比9%減)にまで落ち込んだ。しかしながら、シェアは回復基調にあり、4年ぶりに40%を達成した。99年5月は45.7%を記録している。この回復は直接的には新型リッターカー「ヴィッツ」の販売好調があるが、いくつかの新しい試みの成果が出ていると考えられる。


「販売のトヨタ」の制度疲労とアクセスの機能低下

 しかしながら本質的な問題としてかつての強みが構造的な弱みとなってきていることが指摘できる。

 これまでのトヨタは「トヨタ店」「トヨペット店」「カローラ店」「旧オート店(現ネッツ)」「ビスタ店」からなる5チャネル体制のもと、全国販売会社308社(9割が現地資本)約5,000店舗の巨大流通網を構築し、営業担当地域制(テリトリー制)、販売奨励金、訪問販売を基軸とした販売システムでシェアを拡大してきた。市場が右肩上がりに成長し、均質的なライフスタイルで顧客のアクセスも均質であった時代はこの仕組みはうまく機能し、トヨタの最大の強みであった。

 しかし、消費低迷のもと顧客側のアクセスニーズが変化してくるとこの流通システムは顧客アクセスの機能を果たさなくなったのである。


1) 訪問販売機能の低下

 ユーザーのアクセスニーズが変化している。ユーザーの車選びは自分の都合のいい時間に豊富な選択情報と品揃えから実際に車に乗って触って選択する方向に変化している。自分の望まない時間にやってきて(夜討朝駆け)、乏しい情報で選択させる訪問販売はユーザーのアクセスニーズと全くずれてしまっている。

2) 5チャネル制の形骸化

 五つのチャネルの取り扱い車種は同じクルマを複数チャネルで売る併売車やブランド名は異なるが実質的には同じ兄弟車が多数あり、品揃えの違いがみえなくなっている。5つのアクセスの機能の差異がなくなっている。

 以上のように顧客へのアクセス機能そのものが低下したことと、五つのアクセス機能に差異がなくなったために各販売会社は同一商圏内での過当競争となり、トヨタディーラ同士の激しい価格競争に陥ってしまった。その原資となったのは年間1,000億円(97年度)にも及ぶ販売奨励金である。

 またトヨタがは96年に制定した経営計画「トヨタの2005年経営ビジョン」で「国内販売250万台、輸出100万台、海外生産250万代」という21世紀初頭の姿を描きだした。これは単なる数字目標ではなく雇用確保のためのラインとして提示された。これに基づき販売会社各社は従業員と販売拠点の拡充に動いた。90年に5,178拠点11万9千人だった拠点数と人員を97年には5,627拠点、12万2,239人まで拡大した。

 価格競争の激化と固定費の増加のために販売会社は軒並み収益が悪化している。販売奨励金がなければ事実上赤字に転落するディーラーが多数であるといわれている。トヨタは輸出で稼いだ利益を国内の販売奨励金に投入しているとみられ、93年度に500億円だった販売奨励金は96年度は1,300億円と2倍以上に拡大。97年度は減少したとはいえ1,000億円を計上している。


続きを読む
「流通政策の転換と新顧客アクセス開発」

続きを読むには有料の会員登録が必要です。


業界の業績と戦略を比較分析する


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


お知らせ

2024.12.19

JMR生活総合研究所 年末年始の営業のお知らせ

新着記事

2024.12.20

消費者調査データ No.418 サブスクリプションサービス 広く利用される「プライムビデオ」、音楽サブスクには固定ファンも

2024.12.19

24年10月の「商業動態統計調査」は7ヶ月連続のプラス

2024.12.19

24年10月の「広告売上高」は、6ヶ月連続のプラス

2024.12.19

24年10月の「旅行業者取扱高」は19年比で83%に

2024.12.18

提言論文 「価値スタイル」で選ばれるブランド・チャネル・メディア

2024.12.18

24年11月の「景気の先行き判断」は3ヶ月連続の50ポイント割れに

2024.12.18

24年11月の「景気の現状判断」は9ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.12.17

24年10月の「現金給与総額」は34ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.12.16

企業活動分析 SGHDの24年3月期はロジスティクス事業不振で2期連続の減収減益

2024.12.16

企業活動分析 ヤマトHDの24年3月期はコスト削減追いつかず3期連続減益

2024.12.13

成長市場を探せ コロナ禍の壊滅的状況からV字回復、売上過去最高のテーマパーク(2024年)

2024.12.12

24年10月の「家計収入」は再びプラスに

2024.12.12

24年10月の「消費支出」は6ヶ月連続のマイナスに

2024.12.11

提言論文 価値スタイルによる生活の再編と収斂

2024.12.10

24年10月は「有効求人倍率」は改善、「完全失業率」は悪化

2024.12.09

企業活動分析 江崎グリコ株式会社 23年12月期は国内外での売上増などで増収増益達成

2024.12.09

企業活動分析 日清食品ホールディングス株式会社 24年3月期は価格改定浸透で増収、過去最高益達成

 

2024.12.06

消費者調査 2024年 印象に残ったもの 「大谷選手」「50-50」、選挙も五輪も超えてホームラン!

2024.12.05

24年11月の「乗用車販売台数」は3ヶ月ぶりのマイナス

週間アクセスランキング

1位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

2位 2024.04.05

消費者調査データ ノンアルコール飲料(2024年4月版) 首位は「ドライゼロ」、追う「オールフリー」「のんある気分」

3位 2024.12.04

提言論文 本格消費回復への転換-価値集団の影響力拡大

4位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

5位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area