半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

(2007.04)
決戦のマーケティングシリーズ 2007
「マイクロソフト」 × 「グーグル」 
「無料」への対抗策は機能限定版
本稿は、「週刊エコノミスト2007年4月24日号」掲載記事のオリジナル原稿です。
社会経済研究チーム 松田久一、菅野守、吉野太喜



 米マイクロソフト(MS)は2007年1月末にパソコンの新OS(基本ソフト)「ウィンドウズ・ビスタ」を発売した。2月末時点で全世界で2,000万本以上が販売され、旧OSの「ウィンドウズXP」を大きく上回る好調な出足となった。
 同社は数年ごとにOSをグレードアップして買い換えを促す。さらに対応するアプリケーションソフトも合わせてバージョンアップし、新OSを起爆剤に連鎖的に買い換えが進む仕組みを確立している。こうした戦略により、日本語ワープロやブラウザー(閲覧ソフト)などで次々とライバルを駆逐し、パソコンソフトで絶対的な覇権を築いた。ワープロの「ワード」、表計算の「エクセル」を含むビジネスソフト「オフィス」シリーズを中心としたビジネス部門の売り上げは全体の約3割(06年度第3四半期)を占め、経営の柱となっている。
 ところが、インターネットの急速な普及が、マイクロソフトのビジネスモデルに風穴を開けようとするライバルを生み出した。それがネット検索最大手の米グーグルだ。
 アプリケーションソフトはこれまで、CD-ROMなどのパッケージを店頭で買うか、ウェブサイトからダウンロードするのが一般的な流通形態だった。この場合ソフトはパソコンのハードディスクにインストールしたうえで利用されていた。

SaaSで無料化の道
 ところが、回線が高速化し、常時接続も常識となったことから、ウェブ上でソフトの機能だけを提供する「SaaS(software as a service)」と呼ばれる新たな流通形態が生まれてきた。この場合、利用者はソフトをパソコンに取り込んで「所有」するのではなく、インターネットを通じて「利用」するだけだ。たとえば、ワープロの場合なら、インターネットにつないでブラウザー画面で文章を書いて、ネット上に保存する形になる。常にネットにつながることが条件になるが、その代わり外部の端末からでも簡単に使える。
 流通面でのSaaSの利点は、ソフトを柔軟に販売できることだ。パッケージソフトと違って、必要な機能、期間に限って利用してもらえるため、比較的低価格からの提供が可能になる。その結果、新たな利用者層の開拓も期待される。
 そこでグーグルが乗り出したのが、SaaSによるビジネスソフトの提供だ。2006年、オンラインワープロソフト「ライトリー」の開発会社を買収し、その他のソフト群と併せてビジネスソフト「グーグル・ドックス・アンド・スプレッドシーツ」の提供を始めた。それも、検索サービスと同様、画面上に広告を表示することで無料提供を実現したのだ。
 無料という究極の「価格破壊」を決行するグーグルに対し、有料(「オフィス・プロフェッショナル2007通常版」の実勢価格は約6万円)でパッケージソフトを販売しなければならないマイクロソフトは窮地に追い込まれたかに見える。だが、勝負はそう単純ではない。


※本稿は代表の松田監修のもと、社会経済研究チームで議論した結果を執筆したものです。


 本コンテンツの全文は、メンバーシップサービスでのご提供となっております。
 以降の閲覧にはメンバーシップサービス会員(有料)へのご登録が必要です。

メンバーシップサービス会員ご登録についてはこちらをご覧ください。
メンバーシップサービス会員の方は、下記をクリックして全文をご利用ください。



お知らせ

2024.12.19

JMR生活総合研究所 年末年始の営業のお知らせ

新着記事

2024.12.20

消費者調査データ No.418 サブスクリプションサービス 広く利用される「プライムビデオ」、音楽サブスクには固定ファンも

2024.12.19

24年10月の「商業動態統計調査」は7ヶ月連続のプラス

2024.12.19

24年10月の「広告売上高」は、6ヶ月連続のプラス

2024.12.19

24年10月の「旅行業者取扱高」は19年比で83%に

2024.12.18

提言論文 「価値スタイル」で選ばれるブランド・チャネル・メディア

2024.12.18

24年11月の「景気の先行き判断」は3ヶ月連続の50ポイント割れに

2024.12.18

24年11月の「景気の現状判断」は9ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.12.17

24年10月の「現金給与総額」は34ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.12.16

企業活動分析 SGHDの24年3月期はロジスティクス事業不振で2期連続の減収減益

2024.12.16

企業活動分析 ヤマトHDの24年3月期はコスト削減追いつかず3期連続減益

2024.12.13

成長市場を探せ コロナ禍の壊滅的状況からV字回復、売上過去最高のテーマパーク(2024年)

2024.12.12

24年10月の「家計収入」は再びプラスに

2024.12.12

24年10月の「消費支出」は6ヶ月連続のマイナスに

2024.12.11

提言論文 価値スタイルによる生活の再編と収斂

2024.12.10

24年10月は「有効求人倍率」は改善、「完全失業率」は悪化

2024.12.09

企業活動分析 江崎グリコ株式会社 23年12月期は国内外での売上増などで増収増益達成

2024.12.09

企業活動分析 日清食品ホールディングス株式会社 24年3月期は価格改定浸透で増収、過去最高益達成

 

2024.12.06

消費者調査 2024年 印象に残ったもの 「大谷選手」「50-50」、選挙も五輪も超えてホームラン!

2024.12.05

24年11月の「乗用車販売台数」は3ヶ月ぶりのマイナス

週間アクセスランキング

1位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

2位 2024.04.05

消費者調査データ ノンアルコール飲料(2024年4月版) 首位は「ドライゼロ」、追う「オールフリー」「のんある気分」

3位 2024.12.04

提言論文 本格消費回復への転換-価値集団の影響力拡大

4位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

5位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area