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(2013.07)
ネクスト戦略ワークショップ「消費拡大層を取り込むミドルシフトのマーケティング」成功事例1.
復活するサントリーの洋酒事業
ディレクター 舩木 龍三

本コンテンツは、2013年6月13日に行われた当社イベント、第3回ネクスト戦略ワークショップ「消費拡大層を取り込むミドルシフトのマーケティング」のプログラム「マーケティング成功事例分析」講演録と、同日使用したプレゼンテーションをもとに構成したものです。

 ミドルシフトのマーケティングによって成功した事例として、復活するサントリーの洋酒事業をご案内します。サントリーは2009年から「角ハイボール」を中心に、洋酒事業、ウイスキーが復活していったわけですが、皆さんのイメージですと、どうしても若者を中心に角ハイボールが受けたというような解釈が大きいかと思います。しかし、実はサントリーはその裏で、40-50代のミドルに向けた対策を打っていて、ここ1~2年、大きな成果を挙げてきています。

図表1.洋酒市場とサントリーの実績
 ウイスキーのピーク時は1984年です。この頃30万キロリットルあったといわれています。そこから20年、ずっと長期低迷が続き、2000年で12万キロリットル、最低が2008年の7.4万キロリットルということですから、実にピーク時の4分の1にまで縮んでしまいました。ご存じのようにサントリーは、当時ビール事業は赤字です。他には、ワインと洋酒、焼酎の事業を展開していたわけですが、やはりドル箱は洋酒でした。それが年々縮小していきます。サントリーは上場会社(注:2013年7月、サントリー食品インターナショナル株式会社として東京証券取引所市場第一部上場)ではないので、過去に遡っての利益は正確には公表されていませんが、かなり利益を圧迫したのは事実です。そうした背景から、2005年以降、なんとかウイスキーの立て直しをしていこうと頑張ってきました。

 それ以前は何をしてきたかというと、「オールド」や「リザーブ」など、昔の主力ブランドをなんとかリニューアルして立て直そうということに集中していました。転機は2008-2009年です。2008年に角ハイを徹底的に訴求し、角ハイの飲める店を一気に拡大をしてブームをつくって、市場を反転させたのが2009年です。それ以降、ハイボールを「角」だけでなく、「トリス(TORYS)」や「JIM BEAM(ジム・ビーム)」など、様々なブランドで楽しむという提案をしながら、「山崎」や「白州」「響(HIBIKI)」などプレミアムウイスキーも訴求していこうということで、洋酒市場は7.4から9.8万キロリットルまで回復しました。サントリーの洋酒売上は、当社の推定ですが、2008年当時1,100億円前後だったのが、現在は1,500億円を超えるという規模です。市場の伸び以上に大きく伸びたというのが、ここ数年のサントリーの取り組みかと考えています。

 この5年間ずっと、今年もそうですが、続けている政策はふたつです。ひとつは、ハイボール文化を定着させていこうということです。今までウイスキーというと、食後に飲むお酒...みたいなイメージがありましたが、食中酒として定着させようということです。昔は、「とりあえずビール」という文化があったわけですが、それが次第に廃れていきました。そしてビールに替わって酎ハイ...ではなくハイボールをあまり甘くないお酒ということで、定着させていきました。
 外からみると、角ハイ中心のような戦略の見え方ですが、実はサントリーは、既に2010年からウイスキーのソーダ割り、ハイボールのさらなる接点拡大と定着化ということで、2009年からは角ハイだけじゃないという布石を打ってきました。現在はハイボール市場のさらなる拡大として、多様な味わい方、楽しみ方の提案を提案しています。要はハイボールの元になるウイスキーは「角」だけではなく、「白州」や「山崎」などにまで広げていきます。「角」は「ブレンドウイスキー」と呼ばれるもので、いろんな樽のウイスキーをブレンドしてつくられています。これに対して、「シングルモルト」という、ひとつの樽からつくっていくウイスキーを積極的に提案していくことを継続しています。
 もうひとつは、プレミアムウイスキーでミドルを狙うということです。プレミアムウイスキーとは、「白州」「山崎」や「響」が該当しますが、これを地道に育てていくやり方を続けることで、現在のような業績を挙げることができたということです。

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