9月1日、サミットがネットスーパー事業を10月末日で終了することを発表した。正式には住友商事の100%出資会社である住商ネットスーパーが100%出資するサミットネットスーパーのサービスが終了する。発表に先駆けて8月31日には新規会員の登録受付を終了しており、東京都と神奈川県の既存会員25万人には10月31日までサービスを提供する。
サミットネットスーパーは2009年10月にサービスを開始したがその特徴は、首都圏では初の「専用の物流センターからの出荷(センター型)」にあった。国内のネットスーパー事業は、2000年に西友、2001年にイトーヨーカ堂、2008年にイオンが開始するなど、大手GMSグループが先行し、ライフコーポレーションなど食品SM企業へと広がっていった。こうした企業の多くは、ユーザーの自宅の近隣店舗から商品を出荷する「店舗型」であった。しかし、この方式は店舗の在庫から出荷するため欠品リスクが高い。さらにピッキングや梱包も従業員のマンパワー依存で現場が混乱するなど、不確実な要素が多かった。
センター型は、こうしたリスクを回避できるが、一方で設備投資や人員確保など先行投資が大きな負担となる。サミットネットスーパーは、首都圏におけるサミットの知名度や住友商事の資金力をバックボーンに大手への対抗軸になると注目されていた。参入当初は、事業開始から5年後の2014年度には黒字化、10年後の2020年代はじめに事業規模1,000億円を打ち出していた。サミットの売上高が2,372億円(2014年3月期)であることからも強気な姿勢がうかがえる。
撤退の理由は、「受注数が想定を下回り続けている」とあるが、これには三つの側面がある。ひとつめは、「利用率」である。登録会員数25万人は東京・神奈川エリア限定ということでは順調に拡大していったが、実際に利用しているユーザーが少ないということである。首都圏では、イトーヨーカ堂、イオン、西友はもちろん生協やCVSの宅配、さらにはネット事業者の楽天が参入するなど競争相手が多い。最近はネットでの登録が容易なため、複数登録者も多く、高頻度で利用する固定客づくりが難しい。
つぎに、「配送料無料のコスト負担」である。会員ランクにより1回あたりの購入金額によって配送料無料としているが、例えばユーザーからすると、配送料を無料にするために一度の購入金額が大きくなる。そうすると食料品のストックができ、発注回数は必然的に低くなってしまう。日持ちのしない生鮮食品や日配品などは近隣の店舗で購入することになる。購入金額の条件付きで配送無料にしている事業者は必ずこのジレンマに陥る。
三つめが、「店舗での買い物の復権」である。SM各社は大手CVSの出店攻勢に対抗するため、「買い物の楽しさ」を重視するようになり、衝動買いを促進させるための品揃えや売場づくりを強化している。具体的には、CVSやネット通販では限界のある生鮮食品や作りたて惣菜の品揃え、個店ごとに商圏の生活者に響く地域密着の売場づくりなどである。
現在のネットスーパーの市場規模はおよそ1,000億円と推計され、今後も拡大が見込まれる成長市場である。最大の売上規模を誇るイトーヨーカ堂の2013年度売上高は450億円で前期比113%と二桁成長を遂げている。しかし同社の期初計画は520億円で、計画値からすると大きく及ばない。イトーヨーカ堂のネットスーパー事業も2013年度からセブン&アイ・ホールディングスが掲げる「オムニチャネル戦略」の中で、同グループのネットショッピングのポータルサイト「セブンネットショッピング」のサービスのひとつとして取り込まれている。
このようにネットスーパー事業を取り巻く環境は、登場から約10年を経て大きく変わってきている。サミットのネットスーパー撤退は、「店舗型」「センター型」という仕組み云々はもちろんだが、ネットスーパーの事業モデルそのものが踊り場を迎えていることをあらわすトピックスである。