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(2014.06)
顧客接点のリ・デザイン -成功事例-
1.商品接点のリ・デザイン
ビジネスディベロップメントマネジャー 合田英了

本コンテンツは、2014年5月22日に行われた当社イベント、第5回ネクスト戦略ワークショップ「顧客接点のリ・デザイン  次世代マーケティングの提案」のプログラム「マーケティング成功事例分析」講演録と、同日使用したプレゼンテーションをもとに構成したものです。


構成
  (1)パナソニック「ビストロ」(品質差別化)
  (2)ドトールコーヒー「星乃珈琲店」(ドトール・日レスホールディングス)
      (品質差別化)
  (3)ロイヤルホスト(ロイヤルホールディングス)(品質差別化)
  (4)キッコーマン(品質差別化)
  (5)カルビー(スモールセグメント開発)
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 初めに、商品接点のリ・デザインの基本的な考え方を整理します(図表1)。顧客接点が拡がっていき、商品の選択肢もロングテールのテール部分が拡がっています。こういう状況下で、特にヘッドの部分については価格で選ぶというところから品質で選ぶというふうに変わってきております。従って、いかに価格競争から一歩抜けだして、お客さんの選択が変わる節目を狙って、品質で差別化していくかということが非常に課題になっています。

 一方、テールの部分については、商品の多様化ではもう済まなくなってきています。多品種化もどんどん進んでいく形になってきております。そういう中ではいろいろ接点も拡がっていって、テールの部分も増えていきます。いかにスモールセグメント、つまり小さい規模でも、確実に欲しいという人たちに向けた商品、あるいは接点をつくっていって、スモールセグメントを積み上げることによって自社の需要を増やしていくということが課題になっていきます。

 本日は品質差別化とスモールセグメント開発という、このふたつについて、幾つか参考になる事例をご案内していきたいと思います。


図表1.顧客接点のリ・デザイン


(1)パナソニック「ビストロ」(品質差別化)

 最初の事例はパナソニックの「ビストロ」です。こちらは品質差別化の中でも、情報によって品質差別化をしていく事例ということで取り上げております。図表2の左は、日本の電子レンジ、それからスチームオーブンレンジと呼ばれる市場において、ここ最近のランキングを示したものです。この中でいくと、東芝の「石窯ドーム」とか、日立のパンが焼ける「ベーカリーレンジ」とか、そういったものが並んでいっていますが、ひとつだけ例外的な商品があります。大体今、市場の平均価格が2万から3万円ぐらいです。シャープの「ヘルシオ」が登場して、単なるレンジではなく、スチームオーブン、具体的には加熱の水蒸気によって電子レンジでできることがどんどん広がり、今では焼き物、煮物、それから揚げ物とか蒸し物、そういうものが1台でできるようになってきています。以前は高価格でしたが、今は大体2万から3万円ぐらいで買えるような状況の中、ひとつだけ例外的な商品があります。それが、ここで取り上げるビストロです。

 これは量販店の店頭価格で8万円という商品です。つまり、市場平均価格の大体3倍ぐらい高い価格にもかかわらず、なんと販売ランクの中で上位5位の中に入ってきているという事実があります。ビストロは全部で6機種あり、8万円の機種は量産機種ですが、一番高い機種で大体15万円となります。そういうものがなぜ売れるのか、販売上位のランクに入っているのか、説明します(図表2・右)。一般的には商品上の違いというふうに思われがちですが、確かにビストロもいろいろな機能が付いておりますが、日立とか東芝も結構魅力的な商品もあり、同じように、蒸し物ができたりパンが焼けたり、いろいろ魅力的な機能は備わっています。商品上の違いは大差がありません。


図表2.情報との一体化による品質差別化-ビストロ


 では、3万円と10万円以上で売れるものとの違いって一体何なのか?一番大きなポイントは、ユーザーがつくる圧倒的なメニューの情報の量と質の違いにあります。ビストロはずっと10分でできる時短メニューをコンセプトにしております。具体的には、見た目が良くて、おいしそうで、簡単に作れるメニューです。これをメーカーが考えた、つまらないメニュー提案ではなく、ユーザー自身が考えて、ネットなりリアルを使っていろいろと広がっているところが、東芝とか日立にはないビストロならではの特徴ということになります。その数を数えていきますと、ビストロを使ったレシピを掲載しているブログは大体8万3,000件ぐらいあります。たぶんそういう人たちが1人ひとつなり10個なり、いろんなレシピをあげておりますので、実際は8万以上の、主婦が実現できるメニューがあることが、非常にビストロの強みになっております。

 今ちょうど人気のレシピのランキングを見ていきますと、第1位は「チョコバナナのふわふわオムレット」で、第2位が「絹揚げカップのモチモチマーボー」、3番目が「ほったらかしなのに本格派キーマカレー」となっています。何となくおいしそうな感じがするのですが、こういうものを手軽に主婦が10分で、非常に見た目良く、おいしく、自分でも簡単に作れるメニューが8万個以上あがっています。

 実際に、なぜこういった8万件を超えるレシピがあがるかということに関して、非常に面白い仕掛けをふたつほどやっているので、ご案内します。ひとつは、「レシピ総選挙」というものです。よくある、あちらを真似したような名前なのですけれども、実際は100人の主婦のプロを見つけ、その人たちにレシピを考えてもらうわけです。それらの中からさらに一般の主婦が投票して、その中で上位のものを100個決めるということで、これはビストロの非常に王道のレシピとして認定をしているわけです。それで、100人の主婦のプロたちによって、質の高いメニューを作り出すという仕掛けをうまくやっています。

 それから、「ビストロクッキングカー」というものをやっています。これは今、全国7都市で「マルシェ・ジャポン」という、農水省の助成事業なのですが、それぞれ地域の食材を使ってもり立てていこうというマーケットが開かれています。そこに、トラックを造り、10分のメニューを、いろいろ料理人に作らせたり、本人にやらせたりしているわけです。そういう人たちが必ずブログにあげていきますので、そういうことを地道に全国でやることによって、レシピの幅を広げていきます。こういういろいろな仕掛けによって、東芝とか日立にはない、圧倒的なメニューの情報量と質というものを担保していき、それが大きな品質差別化の要因になっています。


 学べる点はみっつあると思います。ひとつは、メーカー発ではなく、ユーザー発の情報が大切ということです。ふたつは、その情報も単なるデータ情報、例えば売れ筋とかランキング、価格とかスペックとかではなく、プログラム情報と一般的に呼ばれているような体系的な情報、レシピとか知恵とかテクニック、あるいは食品だったら飲み方とか食べ方とか、そういう情報の方が非常に大切だということです。みっつめ、情報をつくり出していく仕掛けです。この場合でいうと、クッキングカーを使って、リアルで情報をあげていくこととか、ネットを使ってレシピを選挙で増やしていくとか、そういうことをして、消費者のネットワークをしっかりと作っていくということが、情報によって差別化していくときに非常に大きく、この例から学べることだと思っております。





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