「手術支援ロボット」が注目されている。医師が、患部の立体映像をリアルタイムに3Dディスプレイで見ながら、遠隔操作でアームを動かして手術をするロボットである。ハイテク技術を駆使した最先端の手術法で、出血が少ないなど患者へのメリットも多く、ガン摘出に用いられる。
市場規模は約4,000億円、年率112%と二桁成長を続けている。家電業界の市場規模がピークである2010年の約9.2兆円から13年に約7.5兆円へ、外食業界は97年の29兆円から13年の23.9兆円へと、多くの業界で市場規模が縮小しているのと比較すれば、二桁成長がいかに驚異的であるかが分かる。
それにも関わらず、手術支援ロボットは、米Intuitive Surgical社(以下IS社)製「ダ・ヴィンチ」によって、事実上独占されている。これほど有望な市場に、世界有数の技術を誇る「ロボット大国」日本のメーカーは、なぜ参入できないのか。
有名人のガン罹患やガン死のニュースを耳にすることが増えてきた。末期の大腸ガンで亡くなった俳優の今井雅之さん、肺ガンで亡くなったタレントの愛川欽也さん、胃ガンの今いくよさんなど、ここ一ヶ月だけでも枚挙にいとまがない。末期の壮絶な闘病を支えた配偶者や本人による、悲痛な会見は見ているだけで本当に心が痛む。日本だけでも、年間80万人がガンに罹患し、36万人が亡くなっている。高齢化が進む中、生涯でみると二人に一人がガンに罹患する。
医師にとってもガンは厄介だ。ガン手術は難易度が高い。肺ガンは術野が非常に微細だし、大腸ガンなど広範囲にわたるガンは開腹すると合併症のリスクが上がる。内視鏡術は操作が難しい。高い熟練を要する。医師の数は限られており、一部の医師に患者が殺到する。
増え続けるガンは、国の財政にも重荷だ。国の借金が1,053兆円(2015年3月末)ある中、日本の保険医療支出はGDP比で10%を超えている。「ガンは共存するもの」という意識が強い欧米と比較し、「可能性があれば徹底的に取りきるもの」と考える日本では、ガンにともなう医療費の負担も大きくなる。
本コンテンツは、弊社代表・松田久一の貴重な助言のもと
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