半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2017年11月27日

増えるコインランドリーと減少するクリーニング店
~変化する市場への対応から需要創造へ~
戦略研究チーム



 洗濯市場が活気づいている。従来からのクリーニング店は減少する一方だが、コインランドリー店は増え続け、今やコンビニエンスストア業界2位のファミリーマートの店舗数と肩を並べるほどに拡大した。ライフスタイルの変化に伴い、おしゃれで清潔感のある「進化型コインランドリー」が支持されるようになり、自宅まで洗濯物を回収に来て、仕上がったら家まで届けてくれる「宅配クリーニング」が人気を集めている。"かゆいところに手が届く"サービスが、利便性を追求する消費者から注目されているようだ。

 コインランドリーは、2015年時点で約1万8,000店(業界推計)が展開されている。2005年の約1万3,000店から、10年間で約5,000店も増加し、毎年5%の拡大を見せている。この伸びは今後も続くと予想され、少なくとも4万店までは飽和しないと言われている。

 一方、同じ洗濯を扱う市場において、クリーニング店は減少が続く。2005年の約4万4,000店から、2013年には約3万2,000店と30%減少している。背景には、1世帯あたりのクリーニング代支出の減少がある。総務省統計局による「家計調査報告」では、2014年の1世帯あたりのクリーニング代支出額は7,164円となっており、2004年の9,942円と比較すると、10年間で30%近く減少している。さらに1994年の支出額は17,883円と、この20年間では約半分程にまで減少している(図表1)。


図表1.クリーニング店とコインランドリーの店舗数の推移
図表

消費行動と価値観の変化を捉えたコインランドリー

 従来、コインランドリーは、銭湯などの公衆浴場の隣に設置され、電気洗濯機を持たない独身者・単身者・学生といった層をターゲットにして普及してきた。

 しかし現在は、主婦層の利用が6割を超えるという。これは共働き世帯の増加によるライフスタイルの変化が大きい。女性のパートやフルタイム勤務が増加し、現代の主婦は自宅にいる時間が以前に比べ減少した。洗濯に割り当てる時間の確保が難しくなり、結果として週末に大量の洗濯物を短時間でまとめ洗いできるコインランドリーが選ばれるようになった。

 さらに、清潔志向、健康志向の高まりもコインランドリーの需要拡大の要因だ。コインランドリーの乾燥機は、80℃以上のガスの熱風で一気に乾燥させるため、ダニ・カビ・菌を一網打尽にすることができる。

 花粉の飛散量の増加や黄砂の飛来により、アレルギー症状を訴える人が増えたこともあり、屋外で洗濯物を干すことを避ける傾向が広がっている。部屋干しによる生乾きを防ぐために、自宅で洗濯だけ行い、乾燥をコインランドリーで済ませるという使い方が広がってきている。

 こうした主婦を中心とした洗濯に対する価値観の変化を受け、コインランドリー側も女性客を取り込むためのイメージ転換を図っている。

 以前のコインランドリーのイメージは、「暗い・汚い・怖い」の3Kと言われていた。しかし、女性の利用者が増加したことで、新しいタイプのコインランドリーでは清潔感や明るさ、広さが旧来のコインランドリーとの差別化につながり、収益に直結するようになった。

 まちづくりコーポレーションが運営する「エコウォッシュカフェ(ECO WASH CAFE)」では、スウェーデンのエレクトロラックス社製のハイスペックな洗濯機・乾燥機を採用しており、外観もガラス張りで中の様子がよく見え、入りやすい造りになっている。

 また、ダイワコーポレーションが運営する「ランドリーデポ」では、24時間対応のカスタマーセンターや、女性が安心して使えるように監視カメラが設置されている。さらに、1日のうち3時間はスタッフが常駐し、清掃を行うことで「無人で怖い」というコインランドリーのイメージを払拭している。

 こうした消費者ニーズの変化への対応が、コインランドリー市場の拡大に繋がったといえる。


続きを読む
「クリーニング市場縮小の三つの要因。時短ニーズを捉えた宅配クリーニング」

続きを読むには有料の会員登録が必要です。


参照コンテンツ


業界の業績と戦略を比較分析する


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


お知らせ

2024.03.25

当社合田執筆の「猛スピードのクルマはいらない」 これからの高齢化社会に必要な“まちづくり”とは何か? そのヒントは欧米になかった!」がメルクマールに掲載されました。

新着記事

2024.04.12

成長市場を探せ ビスケット市場、4年連続プラスで初の4,000億超えに(2024年)

2024.04.11

24年1月の「現金給与総額」は25ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.04.10

マーケティング用語集 イールドカーブ

2024.04.09

24年2月は「完全失業率」、「有効求人倍率」とも悪化

2024.04.08

企業活動分析 任天堂の23年3月期は主にハードウエアの売上減が響き減収減益

2024.04.05

消費者調査データ ノンアルコール飲料(2024年4月版) 首位は「ドライゼロ」、追う「オールフリー」「のんある気分」

2024.04.04

企業活動分析 NTTの23年3月期はITサービス拡大で増収増益、過去最高更新

2024.04.03

24年3月の「乗用車販売台数」は3ヶ月連続の2桁マイナス

2024.04.02

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 20代男性の内食志向にマッチして伸びる冷凍餃子

2024.04.01

24年2月の「新設住宅着工戸数」は9ヶ月連続マイナスに

2024.03.29

企業活動分析 KDDIの23年3月期は法人向け好調等で増収、過去最高益更新

週間アクセスランキング

1位 2024.04.02

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 20代男性の内食志向にマッチして伸びる冷凍餃子

2位 2023.04.05

日本人の7割はチーズ好き ぜいたくニーズに支えられ伸長

3位 2016.03.16

【マーケティングFAQ】どうすればブランド力を強化できるか

4位 2024.03.28

月例消費レポート 2024年3月号 消費は足踏み状態が長期化している-インフレ見通しや消費マインド改善などによる消費回復の後押しに期待

5位 2024.04.03

24年3月の「乗用車販売台数」は3ヶ月連続の2桁マイナス

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area