「119.2%」――この数字は、1993年と2000年を比較した主要消耗品メーカー23社の拡売費の伸び率である。この間の収益構造の変化率をみると、以下のとおりであるが、拡売費が大きく伸びているのに対し、売上は減少していることが確認できる。
図表.主要消耗品メーカー23社の収益動向
なぜ、そうなったのか?営業マンのみなさんはこの事実がよくおわかりだと思う。自社商品の売場を確保するための提案をしても最終的には販促協力金で判断されてしまう。また、「決算協賛金」などの非合理的な支出も要請される。逆に拡売費を抑制すれば売上が下がり、販売目標達成は不可能である。しかし、この不況下、少ない拡売費のなかで高い販売目標が課されている。非常に頭の痛いところでる。
でも、やりようはある。いくつかのヒントを提案したい。第一に、確実に店頭に自社商品が並ぶような拡売費の使い方を考えること。現状、本部商談で決定しても店頭に確実に並ぶかといったらそうでないことが非常に多い。これでは何のために金を使っているかわからない。拡売費増加分を上回る売上拡大を実現しているあるメーカーは「チラシ協賛金」に重点化している。必ず店頭に並ぶからである。
第二に、有力店舗に重点化すること。有力小売業といえども個店の販売力格差は拡大傾向にある。良い店とダメな店がハッキリしている。お客さまに支持されている有力店舗での営業活動が必要だ。当然、本部商談はするものの、店頭に並ぶかどうかは確実ではないのだから、実際に店舗に出向いて売場づくりを要請する。そして、ここがポイントになるのだが、売場担当者に商品の陳列量を増やす、商談した商品以外の商品も陳列する、という提案をしていくのである。良い商品と訴求ポイントがあれば大抵は売れるはずである。売場担当者の信頼が得られれば、個店での商談も可能になるはずである。実際、売場に出向くと売場担当者から悩みをうち明けられ、提案を要請された営業マンもいる。
第三は売場づくり提案の内容を変えることだ。クロスMD、関連陳列の積極提案である。小売業の悩みは客単価の減少である。デフレがすすむなかでで客単価を上げるためには、1人当たりの購入点数を増やすしかない。カテゴリーのなかでお客さまへの提案テーマを設けて関連商品を提案する、カテゴリーを超えて生活提案型の売場づくりをすることである。こうした提案は小売本部よりも個店の方が話しを聞いてくれる。その場で実験ができるし、変更などもしやすいからである。逆に本部では成功例がないと二の足を踏みやすい。
第四は新しい売場の可能性を探ることだ。当社では「売場チャンス」と呼んでいるが、定番棚、エンド以外の売場を創造することだ。レジ前、エンドサイドといった売場が創造されてきたが、もっとチャンスはあるはずだ。そこは価格ではない展開も可能なことが多いのである。
言いたいのは、新しい可能性は店頭の現場にあるということである。小売本部でバイヤーと拡売費をめぐる商談をするよりも、有力店舗の売場担当者の悩みを聞いたり、店頭に行くことの方が有益である。バイヤーとの商談でも店頭のリアルな話をした方が聞く耳をもつだろう。チャンスは店頭にある。
この連載のコンセプトは「営業現場の科学」である。現場の事実にこそ新しい可能性がある。トレンドや勘、経験、根性に頼るのではない、客観的事実の分析にもとづく営業活動のヒントを提案していく。
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