半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2002年02月18日

営業現場の科学
第3回 売れない時代のショットガン営業
営業戦略チーム 合田

 「月15時間」-この数字は、営業マンが提案書づくりに割けるひと月の時間である。売れない時代には提案営業が大切だ。しかし、肝心の提案書を書く時間が非常に限られている。

 営業本部長は「提案! 提案!」、と口やかましくいうけれど、会議や移動やらで時間は過ぎていくばかり。「だったらその提案書を書く時間をもっとくれ!」というのが営業マンの本音だろう。実際に某消費財メーカーの営業本部のケースで試算してみた。1人の営業マンのひと月の稼働時間が1日10時間として20営業日で200h。そのうち会議で50h(5日)が割かれ、移動・休憩で45h、商談で60h、訪問活動準備や伝票整理・日報作成で30hが割かれ、残る提案書づくり時間はざっと見積もって15hというのが現実だ。




 提案には当たり外れがある。成功する提案を増やすには、通る提案書を量産することにある。それはそれでもっともだが、「そんなことできるはずがない!」とお思いの読者は多いだろう。しかし、できるのである。今回提案させて頂くのは、通る提案書を量産する「ショットガン営業」のノウハウである。

 ここにK君の事例を紹介しよう。K君はひとつの提案書をなんと15分でつくる。しかもそれが必ず通るというから驚きだ。驚きの秘密は、三つある。

 ひとつは、提案書の雛形をうまく使っていることである。K君は提案の内容によって異なるいくつかの提案書の雛形を全てパソコンに保管している。「新製品導入商談用の雛形」「棚割提案用の雛形」「エンド提案用の雛形」等いくつかのフォルダに分けて整理し、商談テーマにあわせてさっとファイルを開いて必要な所だけを書き換えカスタマイズした提案書を作成している。

 ふたつは、他人の成功事例をうまく使っていることである。K君は所属する営業所内はもちろんのこと、他の営業所の優秀な営業マンとのネットワークを広く持っている。昼食や飲み会の場、電話・メールを使ってそうした人から成功した提案の話を聞いて、後日「この前おうかがいしたあの提案、ぜひ参考にさせて頂きたいのでファイル貸してくれませんか」と、お願いするのである。

 三つは、悩んだら即相談していることである。K君は20分悩んだら上司に相談することにしている。上司に相談することで、K君が知らなかった他の成功事例や参考にできる提案書のフォーム等に出会えることも少なくない。

 K君はこれらのノウハウを通して、現在成約率トップを独走している。とはいえ、「こういったことをやるには、会社がしっかりとしたデータベースをつくることが必要だ」という声も少なくないだろう。しかしデータベースがなくてもできることはある。まずは社内に眠っている様々な過去の提案書、成功した事例等を参考にしてみることから始めたらどうだろうか。

 提案書づくりに割ける時間は限られている。「時間をくれ!」という前に限られた時間でいかに、通る提案書をたくさんつくるかを考えることが、一流の営業マンへの第一歩である。四の五の言わずに前向きにK君の活動を参考にしてみて欲しい。



おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツ プレミアム会員サービス 戦略ケースの教科書Online


マーケティング用語集

新着記事

2024.11.20

24年9月の「旅行業者取扱高」は19年比で75%に

2024.11.19

24年10月の「景気の先行き判断」は2ヶ月連続の50ポイント割れに

2024.11.19

24年10月の「景気の現状判断」は8ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.11.18

企業活動分析 アルファベット(グーグル)の23年12月期は、グーグルサービスがけん引し売上過去最高を更新

2024.11.18

企業活動分析 アマゾンの23年12月期はAWSがけん引し営業利益前年比3倍へ

2024.11.15

24年9月の「現金給与総額」は33ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.11.14

24年9月の「消費支出」は5ヶ月連続のマイナスに

2024.11.14

24年9月の「家計収入」は5ヶ月ぶりのマイナス

2024.11.13

24年9月は「完全失業率」、「有効求人倍率」とも改善

2024.11.12

企業活動分析 ローソンの23年2月期は、「地域密着×個客・個店主義」徹底し増収増益

2024.11.12

企業活動分析 セブン&アイHDの24年2月期は海外事業の影響で減収も過去最高益を更新

2024.11.11

24年10月の「乗用車販売台数」は2ヶ月連続のプラス

2024.11.08

消費者調査データ No.416 レトルトカレー(2024年11月版) 首位「咖喱屋カレー」、3ヶ月内購入はダブルスコア

2024.11.07

企業活動分析 楽天グループの23年12月期は27期連続増収も、モバイルへの投資で4期連続の赤字

2024.11.07

24年9月の「新設住宅着工戸数」は5ヶ月連続のマイナス

2024.11.06

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場  背景にある簡便化志向や節約志向

2024.11.05

企業活動分析 ファンケルの24年3月期算は国内売上がけん引し、3期ぶりの増収増益へ

2024.11.05

企業活動分析 コーセーの23年12月期は、国内好調も中国事業低迷で増収減益に

2024.11.01

成長市場を探せ コロナ禍の落ち込みから再成長する惣菜食市場(2024年)

2024.10.31

月例消費レポート 2024年10月号 消費は緩やかな改善が続いている-政治が消費回復のリスクに

2024.10.31

消費からみた景気指標 24年8月は6項目が改善

週間アクセスランキング

1位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

2位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

3位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

4位 2024.02.02

成長市場を探せ コロナ禍乗り越え再び拡大するチョコレート市場(2024年)

5位 2021.05.25

MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(1)

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area