都内の主要商業地の地価が上昇している。多くの商圏がパワーを失い低迷する中、魅力ある営業商圏が都心でみられる。
国税庁がまとめた2002年分の路線価(相続税や贈与税の算定基準となる地価)によれば、全国40地点の標準宅地(住宅地、商業地、工業地を含む)の平均額は前年より6.5%下落し、1平方メートル当たり12万9千円で、10年連続で前年を下回った。東京都、特に区部は下落幅が相対的に小さかったが、同じ都市圏でも、東京都以外の東京圏(埼玉、神奈川、千葉)、大阪圏や名古屋圏などの下落率が大きかった。
全般的な不振の中、逆に都内の代表的な商業地の路線価が上昇している。上昇した商圏をみると、大きく三つの傾向が確認できる。
(1)ブランド効果によって路線価が上昇した商圏
中央区では、銀座5丁目(中央通り付近)が1.4%、銀座8丁目が0.7%、渋谷区では神宮前1丁目(表参道付近)が3.2%、東急東横線代官山付近が1.3~2.6%上昇した。これらの商圏は、海外ブランドショップやおしゃれなカフェ・バーなどが軒を連ねる大集客地域である。そのカフェで最近、CAFFE FOGLIO、Yahoo! Cafeなど無線LANのアクセスポイントを設置する店舗が増えてきている。これらの商圏における、消費者の重要な商品選択のてがかりとなるメディアはテレビや雑誌などよりも街で歩く人そのものやネットを通じた情報であり、特定のスポットに集まる消費者を説得する新しいコミュニケーションの仕掛けづくりが必要となってきている。
(2)オフィスビル建設による再開発効果によって路線価が上昇した商圏
千代田区丸の内2丁目は5.3%、港区品川駅東口付近は4.0%の上昇となった。丸の内周辺では、丸ビルを始め、三菱商事新本社ビル開発、丸の内北口開発、八重洲口北側開発などのプロジェクトが進行中で、一方の品川駅東口では品川インターシティの西隣に三菱がオフィスビルや高層マンションを構える予定だ。これらが完成すれば汐留を始め巨大なビジネスセンターが東京に新しく誕生することになる。これらの商圏は、新たな雇用者を集客し、その雇用者を吸収する料飲店やCVS、専門量販チェーンなど新たな商業施設が重層的に集積される将来有望な市場だ。
(3)交通機関による利便性の向上によって路線価が上昇した商圏
麻布十番、天王洲アイルなども路線価の上昇がみられる。麻布十番は都営大江戸線・南北線効果、天王洲アイルはりんかい線(新木場-大崎間、全線開通は2002年12月1日)効果による。路線の変化によって、人の移動が急激に変化し、ある商圏の集客パワーを増大させる典型例である。
路線価の変化は、集客力の変化の現れでもある。都市の動く商圏を見極め、人の急激な移動に素早く反応し、重要な拠点店とメディアを選別し、他社よりも先に営業攻勢をかけ、特定商圏における自社商品のプレゼンスをアップさせる活動がこれからの営業マンに求められるひとつの大切なスキルになると考えられる。
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