食品、飲料、日雑など多くの消費財メーカーの主要チャネルは、GMS、SM、CVSなどの所謂、組織小売業といわれるものになっている。最近では、ダイエーが丸紅を中心とした再建機構による立て直しに入り、また、イトーヨーカ堂やイオンも本業が不調と報じられ、GMS業態が苦戦している一方で、ドラッグストア業態が伸長するなどチャネル戦略の見直し気運も高まっている。
さて、組織小売業への営業の基本は本部商談である。年間取引目標や相互の取り組みに関して、流通企業の本部において自社の商品担当バイヤーと商談を行う。ここで決定されたことは、本部通達として各個店へオペレートされ、例えば今春の新商品が全店に3フェイスずつ、POP付きで導入されるということになる。新商品の配荷店率を上げるには、本部バイヤーとの商談が鍵であることは間違いないが、実は個店へのアプローチが有効であることもまた事実である。
図表.あるチェーンにおける意思決定権
売場づくり施策の意思決定権がどこにあるかを、あるチェーンを事例にしてみてみよう。このチェーンでは、商品のフェイス数やその位置といった定番棚に関しては本部が決定する割合が高いが、エンド陳列や定番外売場、メーカーツールの取付けといった催事に関連する事項では、店長の裁量で意思決定される割合が高いことがわかる(図表)。実際に購入する消費者との接点である売場づくりに関しては、本部決定の一辺倒ではない。個店を丁寧に巡回し、店長や売場担当者に、個店の立地特性や来店者特性に合わせた売場づくりを提案するチャンスがある。
本部権限が強いか、個店裁量が強いかについては、各々の組織小売業の企業方針に依るところが大きいが、業界全体の風潮(上位企業が店長裁量を大きくするという動きを採ると中堅企業は模倣する)にも左右される。また、近年のように利益重視が叫ばれると本部主導が強まるなど、目標の置き方も影響する。
ポイントは、売れる状態づくりを最適に行うために、どの関与者を攻めるのかを明確にしておくことである。配荷率を高めるには本部バイヤーへ、エリア特性を活用した店頭づくりを行うには店長や売場担当者へ、というように自身の展開したい施策に対し、誰に、どのような提案を準備して会えばいいのかを予め準備しておくことだ。「個店の巡回や店頭フォローは特約卸店の業務だ」として、本部商談のみに囚われていると、配荷率は高まっても、店頭での販売が滞ることになりかねない。競合の中で着実にシェアアップしている企業がある場合、こうした個店アプローチ積み重ねによる定番外売場の支配力アップやきめ細かなツール提供などの努力が実を結んでいることがよく見受けられる。個店の売場はこうしたことを察知するレーダーとしても有効に機能する。
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